研究概要 |
HMGドメイン転写因子SOXは、パートナー因子と協同して転写制御を行うという特徴を持つ。SOXは、細胞分化過程で重要な働きをしており、細胞のがん化にも関連している可能性が高い。細胞接着因子N-カドヘリンは、胚発生における形態形成とともに、がん細胞の侵潤性の増大にも関係していることが分かりつつある。HMGドメイン転写因子SOX2とN-カドヘリンの発生過程における発現パターンを詳細に調べたところ、その類似性と現開始の時間的関係から、神経系および感覚器においては、N-カドヘリンがSOX2のターゲット遺伝子であるこが示唆された。実際、ニワトリ胚の頭部外胚葉にSOX2を電気穿孔法で強制発現すると、異所的なN-カドヘリン発現の誘導が見られた。この発現誘導は、同じサブグループに属するSOX1,SOX2,SOX3によっては起こったが、他のサブグループのSOXでは起こらなかった。したがって、SOX1/2/3とこれらのSOXに特異的なパートナー因子との協調作用で、N-カドヘリンの発現制御がなされていることが予想された。また、ニワトリN-カドヘリン遺伝子の転写開始点付近17kbの塩基配列の決定を行ったところ、SOX結合配列が集中して存在している領域が複数見られた。しかし、N-カドヘリン遺伝子の現制御が、この17kb以外にあるエンハンサーにも依存していることが示唆されたので、遺伝子全領域を含むBACクローンを用いて、転写制御領域の同定を行っている。
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