研究概要 |
1.昨年度発見したRas/Rap1結合能力を有するヒトホスホリパーゼC,PLCεについて、Ras,Rap1との共発現による細胞質から各々細胞膜およびゴルジ装置への移送とホスホリパーゼC活性の活性化を示し、Ras/Rap1の標的蛋白質である事を証明した。PLCεは、CDC25類似ドメインにてRap1グアニンヌクレオチド交換促進活性を持ち、Rap1活性化を通じてシグナルを自己増幅する事を示した。PLCεは、マウス胎生期において神経系前駆(幹)細胞に特異的に発現されていた。 2.昨年度発見したヒト新規Rap1,2特異的グアニンヌクレオチド交換促進蛋白質(GEF)RA-GEF-1,2のうち、RA-GEF-1は、そのRAドメインにてRap1・GTPと結合してゴルジ装置へ移送され、そこに存在するRap1をそのGEFドメインにて活性化する自己活性化型のGEFである事を示した。一方、RA-GEF-2はRAドメインにてM-Ras・GTPと結合しRas/Rap1-GEF活性を有した。 3.Ras/Rap1の第二の結合部位であるRafシステインリッチ領域がRaf第二保存領域CR2によってマスクされており、CR2内Ser-259の燐酸化によって開放され、Ras/Rap1結合能力を獲得するという燐酸化による調節機構を示した。これに基づき、Raf活性制御の新しい分子機構を提唱した。 4.出芽酵母アデニル酸シクラーゼC末端領域とその結合蛋白質CAPとの複合体がファルネシル化されたRasの第二の結合部位であり、この第二の結合がRasによるアデニル酸シクラーゼの活性化に必須である事を遺伝学的・生化学的に証明した。標的蛋白質の活性化に於てRasの翻訳後修飾(ファルネシル化)が必須である分子機構が解明され、第二の結合の存在とその重要性が標的蛋白質の種類によらず普遍的である事が示唆された。
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