mel-18の+/-マウスを長期観察していたところ、腺癌・乳癌が多発することが最近確認された。このことは我々が以前mel-18は「がん抑制遺伝子活性」があると報告したことを、個体レベルで始めて証明した事になる。現在その詳細を解析中であり、ヒト腺癌・乳癌の新しい癌抑制遺伝子の発見につながるものと考えている。この発がん機構の説明として「2-ヒット理論」と、「haplo-insufficiency」の2つの作業仮説を考えた。ポリコーム遺伝子群(mel-18)が、ガン抑制遺伝子として機能し、「two-hit」ではなく、「Haplo-insufficiency」による発がん機構であった。さらに核内の巨大なポリコーム蛋白質複合体の精製に成功した。このクラスIIポリコーム蛋白質複合体のバランス制御機構の破綻が、がん化の原因であることが分かった。つまり、核内のポリコーム蛋白質複合体の不安定化・制御機構破綻が継続すると、細胞のがん化を引き起こすことが分かった。この複合体の不安定化による転写抑制機構の破綻が、癌化の原因の一つと考えられる。現在、ポリコーム蛋白質複合体の構成蛋白質の解析を行っている。蛋白質複合体の構成成分は、哺乳類とハエで共通のものも有るが、哺乳類特有のものもいくつか存在していることが分かってきた。転写抑制機構の破綻が、癌化の原因の一つと考えられる。さらに、ガン細胞の細胞周期および細胞死のどちらの(または両方)パラメーターが異常になっているのかを検討するために、DNATipを用い、標的遺伝子の発現スクリーニングを始めたところ、いくつか興味深いがん遺伝子群、がん抑制遺伝子群が同定できた。これらの両方の遺伝子群を同時に制御していることが、細胞のがん化を制御していると考えられた。今後これらの制御機構を詳細に詰めていきたい。
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