Tie2生存シグナルは主に2つの経路を用いていると考えられ、一方はPI3K/Akt経路であり、もう一方はMAPKを介する経路である。Akt経路は我々もTie2リン酸化後のAkt serine473のリン酸化を観察しており、今回Aktの下流でBad蛋白、forkhead転写因子、Caspase9のリン酸化、NFκBの活性化等のいずれが生存シグナルに関与するか検討した。Bad serine136やforkhead転写因子のリン酸化はみられず今後caspase9、NFκB経路の検討が必要と考えられた。もう一方の経路としてはTie2/B-Raf経路の検討を行った。今までの検討よりB-RafはTie2によりチロシンリン酸化され活性化がみられB-RafはTie2のシグナル伝違因子と考えられた。今回Angiopoietin-1濃縮sup刺激によるBad serine112のリン酸化がkinase dead B-RafやMEK阻害剤(PD98059)を用いることで抑制され、B-Raf/MAPK経路がBad serine112のリン酸化を介した生存シグナルに関与すると考えられた。このため、MAPKの下流でBadのリン酸化に関与するp90RSKのリン酸化を検討した。threonne360/serine364については明らかなリン酸化を認めず現在serine381のリン酸化を検討中である。今後他のRsk family(RSK-2、Rsk-3)の検討およびp90Rskのリン酸化が確認されればBad以外に生存シグナルに関係するCREBのリン酸化を検討する。また、近年Tie2の下流因子としてDok-Rがクローニングされた。我々の検討でもDok-RはTie2によりリン酸化された。一過性共発現の系でみるとDok-RはTie2によるMAPKの活性化を抑制した。このことはDok-RはEGF受容体の系と同じようにTie2/MAPK経路のnegative regulatorとして働くことを示唆し今後angiopoietin刺激によるMAPK活性化に対する影響を検討するとともに、Dok-Rの抑制がどのlevelでおこっているか検討するため、Dok-RのB-Rafリン酸化やMEK1/2のserine217/221のリン酸化への影響を検討していく。また、今回Dok-Rは免疫沈降法によりTie2の他にTie1とも複合体を形成することが観察された。Tie1、Tie2のみの共発現の系ではこれら受容体のheterodimer形成は確認できなかったが今後Dok-Rを受容体と同時に発現してheterodimer形成についての検討やTie1に結合したDok-RによるTie2シグナルの修飾について検討を加える。
|