研究概要 |
TGF-βシグナルに関わる新規分子を取得することを目的として,yeast two-hybridスクリーニングによりBMP receptor associated molecule (BRAM)に結合する因子,BRAM interacting protein (BIP)を単離した。BIPホモログはヒト,アフリカツメガエル,線虫C. elegansに存在していた。C. elegansにはBRAMホモログ、BRA-1,BRA-2が存在し、C. elegans BIPがこれらと相互作用することが期待されたので,C. elegansを用いたBIPの機能解析を行った。C. elegans BIPとBRA-1,BRA-2の相互作用を検討し、C. elegans BIPはBRA-1,BRA-2の両者と結合することが明らかとなった。次にdouble stranded RNA interference (dsRNAi)を用いて検討した。野生型にBIP dsRNAをインジェクションし,F1を観察したところ野生型の体長は1.18±0.09mmであるのに対し,BIP dsRNAをインジェクションした群では1.00±0.09mmと,BIPの機能欠失によって体長の短いSmaの表現型を示すことが明らかとなった。そこで,sma経路のリガンドであるDBL-1の過剰発現変異体dbl-1(++)に対するBIP dsRNAiを検討したところ,dbl-1(++)の体長は1.53mmであるが,これにBIP dsRNAをインジェクションした群では,体長が1.24mmまで短くなり野生型と同程度になる個体が認められた。さらに,sma経路の標的遺伝子であるlon-1機能欠失変異体にdsRNAiを行ったが,この変異体に対しては作用が全く認められなかったことから,C. elegans BIPはsma経路においてリガンドDBL-1より下流かつ標的遺伝子であるLON-1より上流に位置することが確認された。以上の結果よりBIPはBRA-2に作用してsma経路をポジティブに調節している可能性が高いと思われた。 一方、Jab1によるp27分解制御機構に関する研究を行い、ドミナントネガティブJab1を増殖中のマウス繊維芽細胞株に導入すると、p27の発現量が上昇し細胞周期の進行がG1期に停止することを明らかにした。また、細胞・個体レベルでのJab1の機能を解析するため、Jab1の発現を人為的に誘導できる細胞株とノックアウトマウスの作製を行い、ヒトがん細胞におけるJab1の遺伝的変異検索を開始した。
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