我々が独自に見いだした新規frizzled結合分子、fzip-1、は、培養細胞内ではゴルジ体に存在し、またfrizzledとの共発現などの一連の実験から、ゴルジ体からの物質輸送に関与している可能性が示唆された。そこで生体内でのfzip-1の機能を解析するため、fzip-1ノックアウトマウスを作成・解析した結果、fzip-1欠損マウスの雄が不妊であることが明らかとなった。電子顕微鏡による詳細な解析により、fzip-1欠損マウスでは、ゴルジ体から先体への物質輸送阻害が原因であると思われる先体の形成不全が観察された。このことは、fzip-1がfrizzledの輸送に係わるのみでなく、他の分子の輸送にも関与していることを示している。一方、frizzledの細胞膜における局在は、frizzledが細胞極性を制御する上で重要であると考えられることから、fzip-1欠損細胞におけるfrizzledの細胞内局在に興味が持たれる。 一方、frizzledのさらなる機能解析のために、他のファミリーメンバーに結合する分子の同定を行った。その結果、新たに2つの分子を同定し、fzip-2およびfzip-3とした。fzip-2は、frizzled4、7に結合し、fzip-3はfrizzled3、7に結合した。fzip-2は複数のPDZ domainを有しており、HAタグを導入したfzip-2の細胞内への導入の結果、主に細胞膜に局在することが明らかとなった。またfzip-3はcoiled-coil motifと特徴的な24アミノ酸からなる7つの繰り返し配列を有し、細胞質に局在していた。これらの結果は、我々が同定した3つのfrizzled結合分子が、それぞれ異なった機能を担っていることを示しており、その解析に興味が持たれる。
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