研究概要 |
1)4'-チオシチジンの大量合成法を確立した.従来の4'-チオヌクレオシドの合成は長工程であるばかりでなく核酸塩基縮合時の立体選択性が乏しく大量合成には不向きであった.今回、プンメラ-反応の際に隣接基関与を効かせることで、比較的短工程で合成する新規方法を開発した.合成した4'-チオシチジンを出発原料にし、2'-ケト体に対する炭素求核剤を付加させ数種の分枝糖4'-チオシチジン誘導体を合成した.それらのin vitroの殺細胞効果を現在検討中である.2)環状デコイ分子の開発とDNA(cytosine-5)methyltransferaseとの相互作用の検討.がん細胞DNA中のCpG配列は異常にメチル化されがん抑制因子などの発現が抑制されていることが知られている.このメチル化にはDNA(cytosine-5)methyltransferaseであるDnmt1やDnmt3a,3bが関与していることが知られている.これらの酵素を効果的に阻害する方法は、従来5-azacytidineの添加が知られているが上記の酵素に対する選択性がない.そこで、CpGの代わりに上記酵素と共有結合を形成する5-fluoroCpGを含む18merの短鎖DNAの両末端をジスルフィド結合で環状化したデコイを合成した.モデル系としてバクテリアのDNA(cytosine-5)methyltransferaseであるM.Hap IIを用いて本酵素に対する阻害を検討したところ、デコイ分子と酵素が1:1に結合することを見い出した.更に、ヒトDnmt1との反応でも本デコイ分子が阻害剤として機能することが明らかになった.現在、詳細な速度論を行っている.
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