研究概要 |
(1)アポトーシス誘導とミトコンドリア呼吸能との関連:Human myelogenous leukemia ML-1aおよび,そのミトコンドリアDNA欠損株C19細胞を使用し,種々の抗ガン剤によるアポ卜ーシス誘導を調べた.シクロヘキシミド,エチニルシチジン(ECyd),アクチノマイシンDはML-1a細胞に対して強力にアポトーシスを誘導したが,C19細胞に対する誘導能は低かった.一方,スタウロスポリン,オカダ酸,エトポシドは両者の細胞に対して強力にアポトーシスを誘導した.これらの結果から,1)スタウロスポリン,オカダ酸,エトポシドはアポトーシス誘導に正常な呼吸機能が必要ない.2)ECydは,呼吸機能依存型のアポトーシスを誘導する.3)シクロヘキシミド,アクチノマイシンDも,呼吸機能依存型のアポトーシスを誘導するが,非依存型アポトーシスをも誘導する.一方,オカダ酸を除いた上記の抗ガン剤は,いずれもチトクロムcの放出を介するアポトーシスであった.次に,ミトコンドリアへのBaxのトランスロケーションとチトクロムc放出との関係を調べた.アクチノマイシンD,スタウロスポリン,エトポシドはミトコンドリアに対するBaxのトランスロケーションを誘導したが,ECyd,シクロヘキシミド,オカダ酸は,ほとんど誘導しなかった.さらに,スタウロスポリンもECydの場合も,チトクロムc放出と同時かその後に,カスパーゼ3の活性化が起こった.しかし,z-VAD-fmk(一般的なカスパーゼの阻害剤)によってチトクロムc放出が阻害されなかったことから,チトクロムc放出の結果としてカスパーゼ3の活性化が起きることが明らかになった.(2)ECydの効果規定因子の解析-ウリジン・シチジンキナーゼ2(UCK2)のクローニング:ECydに対する耐性細胞2種類を含む10種類のヒト固形がん由来細胞での感受性規定因子の検索を行った.その結果,ヌクレオシド類に対するesトランスポーター,最初のリン酸化酵素であるUCK2,シチジンデアミナーゼ(CDA)が感受性規定因子である可能性が高いことが明らかになった.そこで,ヒト繊維肉腫HT1080細胞から5'-RACE法でUCK2をクローニングした.261アミノ酸をコードする786ヌクレオチドが得られ,すでに知られているマウスのUCK cDNAと約70%の相同性を示した.Hisタグを持つUCK2を大腸菌に発現させ本酵素の性質を調べた.本酵素は,ウリジンおよびシチジンをモノリン酸化する活性を示した.
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