研究概要 |
同種造血幹細胞移植後に認められる移植片対白血病(graft-versus-leukemia:GVL)効果は、移植片対宿主病(graf-versus-host disease:GVHD)と密接に関連しているが、選別可能であることが明らかにされつつある。そのエフェクター細胞として、細胞障害性T細胞、NK細胞、LAK細胞があるが、一方で免疫抑制的機能を有するNK細胞レセプターがT細胞に発現することも示されている。本研究では、NK細胞レセプター陽性T細胞の同種造血幹細胞移植後の推移およびGVHDとの関連性を明らかにするとともに、これらの細胞がGVL効果を発揮するかどうかを明らかにする。同種造血幹細胞移植後の末梢血を用い、免疫グロブリン型のNK細胞レセプターであるCD158bの発現をCD3陽性と陰性の分画でフローサイトメトリーで検討したところ、移植後2か月以内にCD158b陽性CD3陰性のNK細胞は増加し、その後も持続した。 CD158bおよびCD3陽性T細胞は6か月頃に増加し,そのほとんどはCD8陽性T細胞で、慢性GVHDとの強い相関性を認めた。他のC型レクチンに属するNK細胞レセプターであるCD94においても同様の結果が得られた。以上より、これら免疫抑制的NK細胞レセプターを有するT細胞がHLA拘束性をもちながらGVHDの制御に重要な役割を果たしていることが示唆された。今後、この細胞の機能をより詳細に解析し、GVHD制御とGVL効果を効率良く発揮させるための方法を確立することが重要である。NK細胞レセプターの誘導には同種抗原の持続的な刺激が必須であり、IL-2、IL-12,、IL-15などのサイトカイン刺激もその発現に有用であることが示唆されている。これらの手法を用いて、NKレセプター陽性細胞を増殖させ、その役割を明瞭にすることで、がんの根治療法の確立に展望が開けるものと考える。
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