研究概要 |
悪性リンパ腫と胃がんをモデルとして、放射性同位元素(RI)標識モノクローナル抗体を用いるがんの特異的治療法開発に関する研究を行った。RIで標識した抗体は患者の体内で抗原・抗体反応に基づいて対応する抗原を発現しているがん細胞と特異的に結合するため,がんの画像診断としてのみならず副作用の少ない腫瘍特異的な治療法になると期待されている。本研究では施設倫理委員会の許可のもとに、細胞障害性の強いRI(放射性ヨード-131)で標識した少量のモノクローナル抗体を、胃がん、悪性リンパ腫患者に投与し、その体内分布、腫瘍集積性、安全性、有効性について検討した。 CD20抗原に対するマウス由来の抗体は悪性リンパ腫組織に,ヒト型A33抗体は胃がん患者において腫瘍への集積が確認された。悪性リンパ腫の1例では少量のI-131標識抗CD20抗体の投与でも治療効果があると思われた。いずれの抗体も安全にヒトに投与され、今後、大量のI-131標識抗体を用いる悪性腫瘍の特異的な治療法に発展する。 一方、がん治療目的にI-131に代わる抗体標識用RIの研究も行われており,γ線を放出しないイットリウム(Y)-90を使用すれば,外来治療が可能で,多くの病院で臨床応用することができる.今後のRI標識抗体による治療の普及のためには、Y-90標識抗体などγ線を放出しないRI標識抗体によるがん治療の研究も欠かせない.
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