従来、リンパ球系列の細胞としては、T細胞、B細胞、NK細胞の3種類の存在が知られていたが、近年になって新たに第4のリンパ球系列の細胞群としてNKT細胞が同定された。この細胞は、自己免疫疾患の発症抑制や、強い抗腫瘍作用を有することから注目を集めているが、その分化経路・機序に関しては不明な点が多い。我々は、最近、NKT細胞の前駆細胞を同定し、この細胞においてGM-CSFレセプターを介したシグナルによってT細胞レセプターalpha鎖遺伝子再構成が高頻度に誘導されることを明らかにした。本研究の目的は、このような遺伝子再構成、分化に関連する遺伝子群を単離し、NKT細胞分化機序の一端を明らかにすることである。 セルソーターを用いて、分取したNKT前駆細胞をGM-CSF存在下に培養を行い、分化を誘導した。成熟NKT細胞に発現するT細胞リセプター遺伝子の再構成および再構成に伴って生成されるシグナル配列をPCR法にて同定し、in vitroでの遺伝子再構成を確認した。次いで、分化誘導前のNKT前駆細胞のcDNAとの間でサブトラクション・クローニングを行った。活性化前駆細胞に特異的と考えられた数百個のクローン関してさらにvirtual Northern法ならびにRT-PCR法によって特異性を確認し、確認されたすべてのクローンをシークエンスした。この分化誘導に伴い24種類の既知遺伝子と、6種の新規遺伝子が分化に伴って発現レベルが上昇することを確認した。新規遺伝子に関しては、得られた配列情報に基づきRACE法を行い全長mRNA配列の決定を行っている。今後主にNKT細胞の分化、機能等の観点から機能の解析を続行する計画である。
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