がん細胞で特異的に目的遺伝子を発現する厳密な遺伝子発現制御機能を備えたベクターと、部位特異的組換え酵素Creの高い組換え効率を応用してがん細胞特異的プロモーターからCreを発現するベクターとCreにより発現がONへと制御される標的ユニットを有するベクターを同時発現する「アデノウイルス二重感染法」を開発したが、本研究ではこれらの機能を併せ持つ「単一型特異的高度発現ベクター」をウイルスゲノムのほぼ全長を目的遺伝子と置換したguttedベクターの作製を行う。新たなguttedベクターの作製法として昨年度からCreによる「遣伝子置換反応」を応用する方法の検討を始めているが、本研究では発現制御系としてCreを用いるため、第二の部位特異的組換え酵素として出芽酵母由来のFLPによって認識されるが野生型標的配列FRTとは組換えを起こさない変異型FRrの検索を行った。その結果野生型FRTrと効率がほぼ同程度の組換え効率を有する5種類の変異型FRTを新たに同定した。またguttedベクターは25kbの目的遺伝子が挿入可能であり、複数の標的ユニットを同時期に導入することも可能であるため、Cre/loxPと変異型loxPを用いた「複数遺伝子同時発現制御系」についても検討を行った。昨年度報告した効率・精度ともに高い変異型loxPの一つであるVを有するV標的ユニットと野生型loxP標的ユニットを同一分子上に有するブラスミドを構築し、トランスフェクション及び細胞株を用いて検討を行ったところ、いずれの検討からも精度・効率ともに高い系であったことが明らかとなった。今後はFLPを用いた遺伝子置換反応によりguttedベクターを作製し、Creの発現制御系と併用して安全性の高いがん細胞特異的べクターの開発を行っていく。
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