研究概要 |
細胞の生死はさまざまなタンパク質により制御されており、アポトーシス制御機構の異常は癌化、癌の悪性化に密接に関係している。本研究ではアポトーシスの情報伝達経路の上流でアポトーシス抑制作用を示すと考えらるFLIPと、下流で抑制作用を示すと考えられるApollonの機能を解析し、これらのアポトーシス制御因子の癌化・癌の悪性化との関連を調べた。FLIPの機能を解析するために、FLIPと結合するタンパク質のスクリーニングを行い、カルシウム結合配列をもつ2種類のタンパク質を同定した。これらのタンパク質の機能はまだよくわかっていないが、カルシウムによるアポトーシス制御にFLIPが関与する可能性が考えられる。Caspaseを阻害することが報告されているIAPファミリー(XIAP,survivin,cIAP1,cIAP2,Apollon)の発現を39種のヒトがん細胞株で調べた結果、XIAP,survivin,cIAP1は肺、大腸、胃、乳がん細胞の多くで発現が認められ、cIAP2,Apollonは主に脳、卵巣、腎がん細胞で発現が認められた。Apollonの細胞内での発現部位を脳腫瘍細胞SNB78及び腎がん細胞RXF631Lで免疫染色により検討した結果、いずれの細胞も細胞質が強く染色された。次に脳腫瘍の臨床検体でApollonの発現を免疫組織化学染色法により検討した結果、悪性度の高い脳腫瘍ほどApollonを発現する傾向が観察された。脳腫瘍細胞株のひとつSNB-78はApollonを大量に発現しており、いろいろな抗癌剤に抵抗性を示した。SNB78細胞でApollonの発現量を低下させると、細胞は抗癌剤によるアポトーシス誘導をおこしやすくなった。これらの結果からApollonはアポトーシスを制御することにより、脳腫瘍の悪性化に関与する可能性が示唆された。
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