研究概要 |
がん細胞は複数の遺伝子が多段階的に変異を起こし蓄積することで転移や治療抵抗性などの悪性形質を獲得する。この悪性形質は同じ病型でも個々の患者でしばしば異なり、今後「がんの個性」を見極めた至適治療の選択が重要課題になる。既にがん悪性化に関与する遺伝子も知られているが未だ一部に過ぎず、複雑で多様な「がんの個性」を規定する未知遺伝子群の徹底的な解明とそのがん診断への応用に期待がかかる。今回の研究では、各種腫瘍においてゲノムコピー数異常の網羅的解析を行い、検出した新規の遺伝子増幅領域を標的に位置候補遺伝子アプローチで癌関連遺伝子の単離を進めた。また、CGH法を基盤にした高密度、高精度のゲノムマイクロアレイの開発に着手しhigh-throughput遺伝子診断技術の開発基盤を構築し、「がんの個性診断法」の確立を進め以下の成果を得た。 (1)種々の癌腫において腫瘍細胞株ならびに臨床サンプルの合計300例以上を対象にCGH法によりゲノムコピー数異常を探索した。 (2)見出された新規増幅領域のうち1q32,3q26-27,5p11.2,5p13,9p24,11p13,14q12-13,15q26,18p13,20qなどの領域で癌関連遺伝子の探索を進め、ATF3,CENPF(1q32)、SNO,EVI1(3q26)、CD44(11p13)、IQGAP1(15q26)、TS,YES1,TGIF(18p)の既知遺伝子が増幅の標的であることを明らかにした。また、新規の癌関連遺伝子候補として9p23-24増幅領域よりGASC1、20q増幅領域よりTGIF2を単離した。 (3)高密度ゲノムDNAアレイの作製に着手し、UCSF癌研究所Joe Gray博士らと共同によりゲノムアレイにより1コピーレベルの異常が検出できることを確認した。
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