超音波によるがん治療をめざした遺伝子導入とアポトーシス誘導の基礎的研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12217049
• 研究機関: 富山医科薬科大学
• 研究代表者: 近藤 隆 富山医科薬科大学, 医学部, 教授 (40143937)
• 研究分担者: 田渕 圭章 富山医科薬科大学, 生命科学実験センター, 助手 (20322109) ; 趙 ちん利 富山医科薬科大学, 医学部, 教務職員 (90313593) ; 小川 良平 富山医科薬科大学, 医学部, 講師 (60334736)
• キーワード: 超音波 / 遺伝子導入 / 遺伝子発現 / アポトーシス / キャビテーション / フリーラジカル

研究概要

物理的エネルギーの癌治療への応用と最適化をめざして、放射線、温熱および超音波を対象に作用を比較しながら研究を進めている。その中で特に超音波による遺伝子導入、アポトーシス誘導および遺伝子発現の制御を目的としている。昨年までのin vitroでの超音波による遺伝子導入の結果を踏まえ、生体照射系で細胞膜の流動性を高める膜作用試薬や温熱併用が遺伝子導入の効率を高めることを見いだした。ヒト前立腺癌細胞のPC-3をヌードマウスに移植し、遺伝子を注射により投与した後、超音波により増強する固形腫瘍照射の実験条件についても確立した。超音波造影剤による超音波誘発細胞死増強効果を含め、造影剤による実験腫瘍系での遺伝子導入増強効果を確認した。アポトーシス誘導については各種阻害剤や抗酸化剤等を用い、その機構解明をすすめ、遺伝子発現の制御については、超音波で誘導されるheme oxygenase 1のプロモータ解析を進めている。また、周波数の異なる超音波を用いて、生物効果と化学効果に関する周波数依存性を比較し、最適周波数を検討した。放射線および温熱誘発アポトーシスの化学的修飾剤についても継続的に調べており、アポトーシスを起こしにくい細胞での温度依存性フリーラジカル発生剤による温熱誘発アポトーシスの増強やシメチジンによるヒト末梢血リンパ球における放射線誘発アポトーシスの防護効果等を明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Tabuchi, Y. et al.: "DNA microarray analyses of genes elicited by ultrasound in human U 937 cells"Biochem. Biophys. Res. Commun.. 290. 498-503 (2002)
• [文献書誌] Arai Y.et al.: "Enhancement of hyperthermia-induced apoptosis by local anesthetics on human hystiocytic lymphoma U937 cells"J. Biol Chem.. 277・21. 18986-18993 (2002)
• [文献書誌] Feril, Jr.L.B.et al.: "Enhancement of hyperthermia-induced apoptosis by nonthermal effects of ultrasound"Cancer Lett.. 178. 63-70 (2002)
• [文献書誌] Kojima, M. et al.: "Protective effects of cimetidine on radiation-induced micronuclei and apoptosis in human peripheral blood lymphocytes"Free Radical Res.. 36・3. 255-263 (2002)
• [文献書誌] Ogawa, R. et al.: "Effects of dissolved gases and an echo contrast agent on ultrasound mediated in vitro gene transfection"Ultrason. Sonochem.. 9. 197-203 (2002)
• [文献書誌] Honda, H. et al.: "Effects of dissolved gases and an echo contrast agent on apoptosis induced by ultrasound and its mechanism vis the mitochondria-caspase pathway"Ultrasound Med. Biol.. 28・5. 673-682 (2002)
• [文献書誌] 林陽子 他: "磁気共鳴と医学 vol.13"日本医学館. 146-149 (2002)