急性白血病再発例の治療反応性は初診時に比べ悪く、白血病細胞のmRNA発現様式は、その進展・増殖・治療反応性と深く関連している。本研究は、2304個のunselected genes(Research Genetics)を有するDNA microarrayを用い、以下の点について検討した。 1.1μgのtotal RNAを用いて解析が可能なoligo-dT/T7 promoterとswitch mechanism at 5'-end of RNA template(SMART)法を組み合わせたリニア増幅法を開発した。 2.急性骨髄性白血病(AML)7症例において初診時及び再発時のtotal RNAを抽出し解析した結果では、multidrug resistance gene(MDR1:再発時2.4倍)を含む19個の遺伝子が2倍以上再発時にupregulateされており、Annexin I(再発時2.7倍)を含む23個の遺伝子がdownregulateされていた。さらに個々の遺伝子についてはPCR法にて確認予定である。 3.AML FAB-M1症例4例とFAB-M3[t(15;17)]症例4例で病型によるmRNA発現様式を比較した。FAB-M3ではM1と比較し448個の遺伝子が2倍以上upregulateされており、myeloperoxidase precursorを含む58個以上の遺伝子が4倍以上upregulateされていた。M1にくらべM3で2倍以上downregulateされている遺伝子は79個みられ、4倍以上downregulateされている遺伝子は11個みられた。このことよりFAB-M1とFAB-M3では遺伝子発現様式でかなりの相違があることが示された。 興味深い遺伝子発現様式の相違が観察されており、今後は新しい治療法の開発や遺伝子の機能解明につなげるように研究を発展させていく予定である。(本研究はM.D.Anderson癌センターCancer Genomics Core Lab.のWei Zhang博士との共同研究である。)
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