研究概要 |
本研究では、合成環状過酸化物1,2,4,5-テトラオキサシクロアルカンによる血管新生阻害または抑制効果の観点から抗がん特性を検討した。まず、ヒト線維肉腫細胞HT-1080に対するウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(u-PA)産生阻害活性試験を、生細胞のコハク酸脱水素酵素の還元能を指標とする細胞毒性試験と併せて実施した。これまでに数十種類の1,2,4,5-テトラオキサシクロアルカンのin vitroでの効果を検討した結果、いくつかの環状過酸化物は血管新生阻害特性に優れていることが明らかにされつつある。その中でも特に注目される基本骨格として、8員環過酸化物1,2,4,5-テトロキソカン誘導体が有望であるとの見通しを得ている。この一群の化合物のもう一つの特徴として、細胞毒性が極めて低いことが挙げられる。CAM法で得られた結果は、HT-1080に対するu-PA産生阻害試験の結果と良い対応をなしている。しかしながら、40mg/eggの用量で60%以上、かつ10mg/eggの用量で30%以上のものを有効と判定しているが、今回検査したものの中には、残念ながらその条件を満たすものは見つかっていない。 現在、カルボキシル基を側鎖に持つ水溶性1,2,4,5-テトロキソカン誘導体の合成を成功裡に終了し、活性の測定結果を待っている段階である。また、鎖状過酸化物1,1-ビス(アルキルジオキシ)シクロドデカンを多数合成し、その新生血管産生阻害作用について測定を開始している。
|