T細胞認識腫瘍抗原と宿主免疫応答

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12217092
• 研究種目: 特定領域研究(C)
• 研究機関: 岡山大学
• 研究代表者: 中山 睿一 岡山大学, 医学部, 教授 (60180428)
• 研究分担者: 小野 俊朗 岡山大学, 医学部, 助手 (50185641) ; 上中 明子 岡山大学, 医学部, 助手 (50273967) ; 野口 雄司 岡山大学, 医学部, 助教授 (10314684)
• キーワード: がん抗原 / がんワクチン / がん免疫療法 / T細胞抗体 / 抗体 / CT抗原 / SEREX

研究概要

本研究では、その特徴的な発現様式から、がん抗原の中でも、特に、免疫療法に用いるがんワクチンとして期待されるcancer/testis(CT)抗原について、マウスおよびヒト腫瘍を用いて解析した。まず、マウスメチルコラントレン肉腫MethAのSEREX解析を行った。MethA担癌BALB/cマウス血清はMethA由来の35個のcDNAクローンの産物と反応した。これらのクローンを解析し、10種類の抗原OY-MS-1-10を同定した。5種類は既知、5種類は未知の分子であった。これらの抗原mRNAの各種正常組織および腫瘍での発現を検討した。OY-MS-4はマウス胎盤・胎児発現遺伝子pemであり、CT抗原であることが明らかになった。次に、ヒトCT抗原NY-ESO-1の移行上皮癌(TCC)における発現と免疫原性を検討した。その結果、TCCにおけるNY-ESO-1の発現は、腫瘍グレード(G)と相関し、G3腫瘍では44%と高い発現頻度を認めた。また、上皮内癌(CIS)では、表在性であるにも拘らず、患者にNY-ESO-1に対する強い抗体産生を認めた。さらに、ヒト精巣cDNAを検索し、新しいヒトCT抗原OY-TES-1を見出した。OY-TES-1ばホモロジー解析からヒトプロアクロシン結合蛋白sp32の前駆体と考えられる。OY-TES-1は種々のがんでその発現が認められる。癌患者でリコンビナントOY-TES-1蛋白に対して高頻度で抗体産生が認められ、がんワクチンとして有望である。

研究成果

• [文献書誌] Ono,T., et al.: "Identification of proacrosin binding protein sp32 precursor as a new human cancer/testis antigen."Proc.Natl.Acad.Sci.USA. (in press.).
• [文献書誌] Sakamoto,N., et al.: "A novel Fc receptor for IgA and IgM is expressed on both hematopoietic and non-hematopoietic tissues."Eur.J.Immunol.. (in press.).
• [文献書誌] One,T., et al.: "Serological analysis of BALB/c methylcholanthrene sarcoma Meth A by SEREX.Identification of a cancer/testis antigen."Int.J.Cancer. 88. 845-851 (2000)
• [文献書誌] Shibuya,A., et al.: "Fcα/μ receptor mediates endocytosis of IgM-coated mictobes."Nature immunology. 1. 441-446 (2000)
• [文献書誌] Kobayashi,Y., et al.: "Expression of MAGE, GAGE and BAGE gene in human liver diseases : utility as molecular markers for hepatocellular carcinoma."J.Hepatol.. 32. 612-617 (2000)