研究概要 |
本研究では、MUC1ペプチドワクチン療法の第1相臨床試験、抗MUC1 CTLの誘導、GalNAc transferase遺伝子群の発現について検討を行ない以下の結果を得た。1)MUC1ペプチドワクチンとして、細胞外ドメインの繰り返し配列を5個含む100merのMUC1ペプチド(300-1000μg)とフロイントの不完全アジュバントを混合して用い、2週間隔で計3回大腿前面皮下投与した。対象症例は手術不能あるいは術後再発の膵癌および胆管癌とした。これまで5例の術後再発膵癌症例において安全にワクチン投与(ペプチド量300μg3例、1000μg2例)を終了した。全例において注射局所の発赤を認めたが、軽度であり薬物療法を必要とした例はなかった。明らかな皮内テスト陽性例は認められなかった。他に明らかな自他覚症状、検査データの異常を認めなかった。臨床的効果はワクチン投与による観察期間(約2ヶ月)中で、不変2例、進行3例であった。5例中3例について血清中の抗MUC1IgM,IgG抗体価をワクチン投与前後で比較した結果、1例で健康対照者群に比較して高い抗体価を認めた。しかし、ワクチン投与による抗体価の上昇は明らかではなかった。2)樹状細胞によるCTLの誘導として、100merMUC1ペプチドと全長MUC1 RNAを抗原に用いて検討した。これまで、RNA刺激によってHLA-A2のドナー1名から抗MUC1 CTLが誘導され、さらに誘導条件を改良中である。3)MUC1のO-glycan生合成にどのGalNAc transferaseが主に関与しているのかを明らかにする目的で、6つの遺伝子についてMUC1 transfectantにおける発現レベルを検討した。その結果、GalNAc transferase-1,2,3,6が検出されたが、これらmRNAの発現レベルは、MUC1 transfectantと対照細胞との間で明らか差を認めなかった。
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