研究概要 |
近年、分子生物学・免疫学の進歩により、メラノーマをはじめとしてT細胞が認識するヒト癌抗原が同定され、それらの抗原を用いた各種の能動的および受動的免疫療法(癌ワクチン)が開発されつつある。欧米では、すでに第一相臨床試験が進行中であり、一部の癌に対しては、実際にそれらの癌ワクチン治療が効果的であるとされているが、再現性および普遍化にはほど遠いのが現状である。メラノーマにおいても数種の腫瘍特異抗原が報告されているが、それらの抗原を用いた癌ワクチン療法は、いまだに確立されていない。さらには、癌ペプチド抗原は抗原の持続時間が短く、頻回投与により、I型アレルギーのアナフィラキシー様症状が出現することもこれらの臨床応用を困難にしている。これらのペプチドワクチンの弱点を克服する手段として、癌抗原遺伝子を用いたDNAワクチン(+サイトカイン遺伝子治療)が想定されている。マウスのメラノーマに対するTRP2遺伝子ワクチンおよびマウス腎癌(Renca)に対するサイトカイン遺伝子治療の開発を試み、以下の結果が得られた。 1,TRP-2遺伝子を用いたC57BL/6マウスに対するDNAワクチン投与により、B16メラノーマの発育が有意に抑制された。 2,さらにTRP-2遺伝子とユビキチン遺伝子の結合遺伝子でワクチンすることにより、より強い抗腫瘍免疫が得られ、CD8^+Tキラー細胞の強い活性が得られた。 3,Rencaに対しては、Rencaの死細胞+サイトカイン遺伝子治療のみでもCD8^+Tキラー細胞と強い抗腫瘍効果が得られた。 4,しかし両系とも転移阻止、治療効果は弱く、今後、ストレス蛋白質(HSP70)遺伝子とのフュージョン遺伝子を用いるなど更なる工夫が必要である。
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