今年度は以下の知見を新たに得た。 1.野生型p53遺伝子を有する正常ヒト細胞において、高い線量ほど細胞老化形質であるSA-β-gal(Senescence-associated β-galactosidase)を発現する細胞の頻度が上昇し、X線照射による老化様細胞増殖停止の誘導に線量依存性があることがわかった。また、野生型p53蛋白質を発言する人癌細胞でも正常ヒト細胞と同様のSA-β-gal発現の線量依存性が認められた。 2.野生型p53遺伝子を欠失したヒト肺非小細胞癌NCI-H1299にエクダイソン制御野生型p53遺伝子発現誘導システムを導入し、野生型p53蛋白質の誘導により細胞はGl/S境界で細胞周期を停止すること、Glアレストを起こした細胞においてSA-β-galの発現が見られることを見いだした。さらに、Glアレストを引き起こさないレベルのp53蛋白質の発現ではSA-β-galは誘導されないことから、p53機能活性化による細胞周期停止がある程度持続されることにより老化様の細胞増殖停止プログラムが発動することが明らかになった。 3.放射線照射による細胞増殖停止にはp53機能に依存したp21^<WAFI/CIPI>の発現誘導が必要であるが、p21^<WAFI/CIPI>の発現は照射後48時間以降では減少することがわかった。しかしながら、RB蛋白質は脱リン酸化された状態のままであることから、p21^<WAFI/CIPI>とは別のCdk阻害剤が誘導しているのではないかと考えた。そこで、p27、p16、p15、p19について発現レベルを検討したところ、P21^<WAFI/CIPI>の減少に伴ってp16のレベルが上昇することを見いだした。
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