研究概要 |
TPによるチミジンの代謝産物である2-デオキシ-D-リボースをHL-60細胞に加えると同細胞が低酸素下でのアポトーシスに耐性になった. 今回 2-デオキシ-D-リボースが低酸素下で引き起こされるBcl-2/bcl-xLの発現の低下、チトクロムcの細胞質への放出,カスパーゼ3,9の活性化を抑制することを確認した。また、2-デオキシ-D-リボースが,低酸素により誘導されるHIF-1αの発現量を減少させること,さらにこれはHIF-1αのユビキチン化を促進させることに基づいていることを証明した.2-デオキシ-L-リボースは、これらの2-デオキシ-D-リボースの作用を阻害した。 ヒトにおいてはチミジンホスホリラーゼ活性の欠損がミトコンドリア脳筋症の一種であるMNGIE(Mitochondrial Neurogastrointestinal Encephalomyopathy)の原因となっていることが報告されている。我々はチミジンホスホリラーゼ(TP)・ウリジンホスホリラーゼ(UP)遺伝子を両方とも欠失したダブルノックアウトマウスを作製することにより全身のチミジンホスホリラーゼ活性を欠損させMNGIEの症状がみられるか,疾患モデルとして利用できるかを検討した。ダブルノックアウトマウス(TP/UPKO)のTP活性と血中のチミジン、ウリジン濃度を測定し、野生型マウスと比較した。すべての組織でTP活性は失われていた。血中のチミジン濃度は野性型と比較し、TP/UPKOは約5倍であった。10ヶ月齢のTP/UPKOの脳はMRIを用いたT2強調画像で高いシグナルが認められた。以上の結果よりTP/UPダブルノックアウトマウスは、脳に病変がみられることから、TP阻害剤の副作用として脳病変が予測されること、脳組織についてはMNGIEの疾患モデルとして利用できることが考えられた。
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