サイクリンD1過剰発現繊維芽細胞では、FGFR-1の転写レベルでの発現上昇が観察された。サイクリンD1は、CDK4もしくはCDK6と複合体を形成してpRBをリン酸化、転写因子E2F-1を活性化する事が知られている。そこでFGFR-1の転写がE2F-1によって制御されている可能性について検討した。その結果E2F-1はmFGFR-1の転写活性を約25倍上昇させた。一方で、転写活性可能を欠落したE2F-1の変異体はmFGFR-1の転写を活性化できなかった。このことから、E2F-1はmFGFR-1の転写を活性化することが明らかになった。また、E2F-1は転写開始点下流+28/+35の配列に直接結合することでmFGFR-1の転写を活性化することが明らかとなった。サイクリンD1過剰発現NIH3T3細胞ではpRBのリン酸化バンドが検出され、pRBが不活性型になっていた。また、サイクリンD1過剰発現細胞ではmFGFR-1転写活性がコントロール細胞よりも高く、このmFGFR-1の転写活性はE2F-1のDominant negative mutantの導入で抑制された。さらに、E2F-1とmFGFR-1の転写領域が細胞内でも結合していることがChIP(Chromatin Immunoprecipitation)assayによって確かめられた。以上の結果より、mFGFR-1の転写がサイクリンD1過剰発現細胞内でもサイクリンD1/pRB/E2F-1経路によって制御されていることが示された。さらに、サイクリンD1過剰発現細胞は単独では足場非依存性増殖することが出来なかったが、bFGFで刺激すると著しい足場非依存性増殖能を獲得した。また、サイクリンD1過剰発現NIH3T3細胞はbFGF刺激によって約2倍の浸潤能を獲得した。
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