研究課題
本研究は分子標的の中でも、細胞周期の制御に関わるサイクリン阻害因子p16遺伝子および血管増殖因子VEGF遺伝子の転写制御領域を標的とし、レポーターアッセイによる抗がん剤の探索を行うことを目的とした。第一にヒトp16遺伝子の転写制御領域5'上流-890塩基を含むDNA断片をレポーターのルシフェラーゼ遺伝子に連結し、ヒト骨肉種細胞(Saos-2)にG418耐性遺伝子と共に導入して、これらの遺伝子を安定に保持して発現する細胞クローンを分離した。これらの細胞を用い、98穴マイクロプレートにより誘導物質の検索を行った。探索は放線菌、糸状菌培養液の約3,000種類および生薬成分の約500種類を用いて行った。探索の結果、放線菌培養上清からp16遺伝子誘導を起こす物質としてtoyocamycinが同定された。この物質は既に抗腫瘍活性があることが知られていたが、p16遺伝子誘導を起こすことは今回初めて明らかにされた。第二に、VEGF遺伝子の転写制御領域で重要と考えられるハイポキシア応答エレメント(HIF)を結合させたルシフェラーゼ遺伝子を構築し、上と同様の方法でCHO-K1細胞に導入して安定にレポーターを保持し、低酸素状態に応答する細胞株を分離した。この細胞で低酸素状態により上昇するルシフェラーゼ活性を抑制する物質の検索を行ったが、この系ではまだ活性物質は見出されていない。
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