研究概要 |
大腸癌患者数は近年増加傾向を示しており、診断治療技術の進歩が強く望まれている。大腸癌は分化型癌、未分化型癌、粘液癌等に分類されるが、このうち比較的予後が悪いとされる粘液癌についての研究は立ち遅れている。我々は、ヒト大腸粘液癌に特異的に見い出されるGlcNAc:→6硫酸転移酵素(SulT)を見い出した。本酵素(SulT-b)は広い基質特異性を有し、殊にGlcNAcβl→3GalNAcα-pNP(core3)を基質としたとき、GlcNAc:→6SulT活性は正常粘膜及び粘液貯留の見られない分化型癌にはほとんど存在しないのに対し、粘液癌及び粘液貯留を認める分化型癌では高率で見い出された。 一方、乳癌及び卵巣癌において活性が増加傾向を示すGal:→3SulTの存在が知られている。この酵素に対応する遺伝子を同定するため我々はセレブロシド合成酵素(GalCer:→3SulT,CST)のアミノ酸配列をもとにデータベースを検索し、1つのcDNAクローンを得た。本酵素(GP3ST-2)は486アミノ酸からなり、一ケ所のN-結合型糖鎖の付加部位を有している。また、N末端側に膜結合ドメインをもつ2型膜タンパク質である。GP3ST-2はCSTと33%、GP3STと39%のアミノ酸配列の一致が見られ、これら3つのSulTはGal:→3SulTファミリーを形成していると考えられる。基質特異性に関しては、CST、GP3STがそれぞれGalCer及びGalβl→3/4GlcNAcを良い基質とするのに対し、GP3ST-2はGalβl→3GalNAcに高い選択性を有し、O-結合型糖鎖に特異的に作用することが判った。これらのSulTは大腸粘液癌及び乳癌、卵巣癌に対する腫瘍マーカーとなり得る可能性がある。
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