新規分化誘導剤の探索とその作用機構の解析

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12217160
• 研究機関: 埼玉県立がんセンター
• 研究代表者: 本間 良夫 埼玉県立がんセンター, 研究室, 主幹 (70142114)
• 研究分担者: 山口 ゆり 埼玉県立がんセンター, 研究室・専門研究員 (80166628) ; 角 純子 埼玉県立がんセンター, 研究室・専門研究員 (30161136) ; 粕壁 隆 埼玉県立がんセンター, 研究室・主任研究員 (50152658)
• キーワード: 分化誘導療法 / 細胞分化 / 白血病 / 植物ホルモン / サイトカイニン / cotylenin A

研究概要

殺細胞効果による癌化学療法剤だけで癌を根治することは困難なのが現状である。遺伝子DNAに損傷を与えないで治療効果を発揮する薬剤は2次発癌を回避する観点からも重要である。分化誘導療法は従来の化学療法と全く異なる作用機構に基づいているので、薬剤耐性機構なども全く異なる。したがって、従来の化学療法との併用は極めて有用でありそれぞれ単独効果よりはるかに良い治療成績をあげている。現在の癌治療戦略にこの新しい治療法を加えることにより一段と治療成績が向上すると期待される。しかし分化誘導療法が臨床的に確立しているのは、急性前骨髄球性白血病だけである。他の白血病患者から採取した細胞も試験管内では各種分化誘導剤で分化可能であることから、分化誘導療法の適用拡大をもっと計れると期待される。臨床応用可能な新規分化誘導剤を検索した。
無脊椎動物や植物の細胞分化に有効な分化調節物質の中に、ヒト白血病細胞の分化を誘導し治療薬として有効な物質がある可能性が考えられる。植物のカルスは盛んに増殖をする未分化な細胞から成り立っている。このカルスから植物組織への再分化を促すホルモンであるサイトカイニンが植物細胞のみならずヒト白血病細胞の分化を誘導することを明らかにした。サイトカイニン以外にも植物の生長調節因子として見いだされたcotylenin Aも白血病株細胞において強い分化誘導活性を示すとともに、患者から採取した白血病細胞の初代培養においても分化誘導に極めて有効であることを明らかにした。低濃度の活性型ビタミンDと併用すると相乗的に分化を誘導し、ほとんどの症例において分化誘導効果が認められた。既知の分化誘導物質の中で最も強力なものはTPAであるが、cotylenin Aはその活性に匹敵するが作用機構は異なることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Honma, Y: "Induction of differentiation of human myeloid leukemia cells by novel synthetic neurotrophic pyrimidine derivatives"Exp Hematol. 29. 194-201 (2001)
• [文献書誌] Niitsu, N: "Sensitization by 5-aza-2'-deoxycytidine of leukaemia cells with MLL abnormalities to induction of differentiation by all-trans retinoic acid and 1α,25-dihydroxyvitamin D_3"Br J Haematol. 112. 315-326 (2001)
• [文献書誌] Yamamoto-Yamaguchi, Y: "Induction of the monocytic differentiation of myeloid leukaemia cells by cotylenin A,a plant growth regulator"Br J Haematol. 112. 697-705 (2001)
• [文献書誌] Yamamoto-Yamaguchi, Y: "Inducton of differentiation of human myeloid leukemia cells by immunosuppresant macrolides(rapamycin and FK506)and calcium/calmodulin-dependent kinase inhibitors"Exp Hematol,. 29. 582-588 (2001)
• [文献書誌] Kano, Y: "In vitro cytotoxic effects of a tyrosine kinase inhibitor STI571 in combination with commonly used antileukemic agents"Blood. 97. 1999-2007 (2001)
• [文献書誌] Niitsu, N: "Serum nm23-H1 protein as a prognostic factor in aggressive non-Hodgkin's lymphoma"Blood. 97. 1202-1210 (2001)