分化誘導剤の作用機構の解析と治療効果の検討

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12217160
• 研究機関: 埼玉県立がんセンター
• 研究代表者: 本間 良夫 埼玉県立がんセンター, 研究室, 主幹 (70142114)
• キーワード: がん治療 / 分子標的治療 / 白血病 / 分化誘導剤 / 細胞分化

研究概要

現在の癌治療戦略に新しい治療法として分化誘導療法を加えることにより一段と治療成績が向上すると期待される。しかし分化誘導療法が臨床的に確立しているのは、急性前骨髄球性白血病だけである。他の白血病患者から採取した細胞も試験管内では各種分化誘導剤で分化誘導可能であることから、分化誘導療法の適用の拡大をもっと計れると期待される。臨床応用可能な新規分化誘導剤を検索しそのメカニズムを明らかにし、臨床レベルで治療効果を検討出来る段階にまで持って行きたい。
植物の再分化ホルモンであるサイトカイニンがヒト白血病細胞の分化を誘導したが、その作用機構をレチノイン酸による分化誘導と比較しながら検討した。アデニン誘導体であるサイトカイニンは細胞内に取り込まれると速やかにヌクレオチドに変換されたが、DNA/RNAへの取り込みは無かった。レチノイン酸による分化誘導には転写因子C/EBPαが関与するが、サイトカニンの場合にはC/EBPδが関与していることが示唆された。また分化誘導に伴い発現が増加してくるmRNA分子種の数は、サイトカイニンの場合がレチノイン酸によるものよりはるかに多かった。
サイトカイニンと同様に植物生長調節因子活性を有するcotylenin Aは株細胞のみならず白血病患者から採取した白血病細胞に対しても分化誘導活性を示すことから、ヒト白血病細胞移植SCIDマウスを用いて延命効果を検討した。Cotylenin Aはretinoid耐性のNB4細胞を移植したマウスに対しても有意な延命効果を示した。副作用も軽微であることから、retinoidに次ぐ分化誘導剤の可能性が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Ishii, Y, Hori, Y, Sakai, S, Honma, Y.: "Control of differentiation and apoptosis of human myeloid leukemia cells by cytokinins and cytokinin nucleosides, plant redifferentiation-inducing hormones"Cell Growth and Differentiation. 13. 19-26 (2002)
• [文献書誌] Niitsu, N, Higashinara, M, Honma, Y.: "The catalytic DNA topoisomerase II inhibitor ICRF-193 and all-trans retinoic acid cooperatively induce granulocytic differentiation of acute promyelocytic leukemia cells : candidate drugs for chemo-differentiation therapy against acute promyelocytic leukemia"Experimental Hematology. 30. 1273-1282 (2002)
• [文献書誌] Niitsu, N, Honma, Y, Iijima, K, Takagi, T, Higashihara, M, Sawada, U, Okabe-Kado, J.: "Clinical significance of nm23-H1 proteins expressed on cell surface in non-Hodgkin's lymphoma"Leukemia. 17. 196-202 (2003)
• [文献書誌] Nakamaki, T, Okabe-Kado, J, Yamamoto-Yamaguchi, Y, Hino, K, Tomoyasu, S, Honma, Y, Kasukabe, T.: "Role of MmTRA1b/phospholipid scramblase 1 gene expression in the induction of differentiation of human myeloid leukemia cells into granulocytes"Experimental Hematology. 30. 421-429 (2002)
• [文献書誌] Honma, Y: "Cotylenin A, a plant growth regulator, as a differentiation-inducing agent against myeloid leukemia"Leukemia & Lymphoma. 43. 1169-1178 (2002)
• [文献書誌] Honma, Y, Ishii, Y.: "Differentiation of human myeloid leukemia cells by plant redifferentiation-inducing hormones"Leukemia & Lymphoma. 43. 1729-1735 (2002)