1.MEK阻害剤U0126のヒトがん細胞の増殖に及ぼす影響を調べ、大腸がんや乳がんの中に足場非依存性増殖を足場依存性増殖よりも強く抑制するものを見出した。乳がんで足場非依存性増殖が選択的に抑制された2株はERK経路が活性化していた。これらの細胞を浮遊状態でU0126処理するとapoptosisが誘導されたが、接着状態では細胞死は起こらなかった。シグナル伝達分子の活性化状態を調べると、U0126はMEK-ERK経路に加え、mTOR-p70S6Kの経路を阻害していた。別のMEK阻害剤PD98059とmTOR阻害剤rapamycinを用いた実験から、両経路を同時に遮断することにより、非接着状態におけるapoptosis(anoikis)が誘導されることが示された。 2.ヒト膵臓がん由来MIA PaCa-2細胞において、ホルボールエステルTPAが足場非依存性増殖を特異的に亢進することを見出し、これに関与するシグナルについて検討した。その結果、MIA PaCa-2細胞の足場非依存性増殖の促進には、PKCを介するERK→AP1の活性化が重要であることが示唆された。
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