日本人のリンパ系腫瘍の進展と予後に関する研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12218207
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 森 茂郎 東京大学, 医科学研究所, 教授 (30010424)
• 研究分担者: 佐藤 均 東京大学, 医科学研究所, 助手 (70183829)
• キーワード: 悪性リンパ腫 / 胚中心 / Epstein-Barrウイルス / 8型ヘルペスウイルス / bcl16 / ホジキン病

研究概要

我が国におけるリンパ腫の病態、進展・予後に関する高水準のデータを提出することを目的として研究を行っているが、本年度に得た主要な成果は以下の4項目である。(1)近年経験されたホジキン病症例Epstein Barr virus(EBV)の関与の様態を検索し、諸亜型のうちnodular sclerosis型において本ウィルスの陽性率が近年激減しているが、他の亜型においてはEBV陽性率に年次変化がないことを明らかにした。(2)鼻咽頭領域のEBV陽性丁/NKリンパ腫は極東に多いことが知られているが、今回我々は鼻咽頭領域原発のEBV陽性Tリンパ腫をSCIDマウスに継代することに成功し、その細胞性格の詳細な解析を行うことを可能にした。その結果本症例においては、染色体の特定部分に相同欠失があることを見いだし、この欠失とリンパ腫発生の関わりの可能性を示した。(3)弥漫性大細胞型リンパ腫の相当部分において、染色体相互転座によるbcl6遺伝子産物の過剰発現がみられることが知られており、これがこのリンパ腫の発生にかかわっていることが推察されているが、われわれは今回、bcl6がpim1遺伝子と相互転座を起こしている症例において、pim1遺伝子がdominant negative formとなっていることを示し、これが腫瘍発生に関与している可能性を示した。(4)8型ヘルペスウイルスがどのような感染経路をとって細胞に感染するかを研究し、細胞接触が役割を果たしうることを示し、また我が国のキャッスルマン病については、エイズに合併した症例には本ウイルスの関与があるが、HIV陰性の例にはこれが関与しておらず、この点欧米の報告と著しい地理病理学的差異があることを示した。

研究成果

• [文献書誌] Katano H, Mori S: "AIDS-related lymphoma, in Epstein-Barr virus and human cancer, ed. by Tanaka K and Sixbey JW"Current Top Microbiol Immunol. 258. 121-138 (2001)
• [文献書誌] Takeuchi K, Morishita Y, Mukayama M, Mori S: "Rapid decrease of EBV-infected cases among Japanese Hodgkin's diseases in recent decades"Brit J Hematol. 113. 429-431 (2001)
• [文献書誌] Sakurada S, Katano H, Sata T, Ohkuni H, Watanabe T, Mori S: "Effective human herpesvirus 8 infection of human umbilical vein endothelial cells by cell-mediated transmission"J Virol. 75. 7717-7722 (2001)
• [文献書誌] Kaneita Y, Yoshida S, Ishiguro N, Sawada U, Hone T, Mori S: "Detection of reciprocal fusion 5'-BCL6/partner-3' transcripts in lymphomas exhibiting reciprocal BCL6 translocations"Brit J Hematol. 113. 803-806 (2001)
• [文献書誌] Suda T, Katano H, Delsol G, Takeuchi S, Nakamura T, Shiota M, Sata T, Higashihara M, Mori S: "HHV-8 infection status of AIDS-unrelated and AIDS-associated mucticentric Castleman's disease"Pathology International. 51. 671-679 (2001)
• [文献書誌] Kakiuchi c, Ishida T, Sato H, Katano H, Ishiko T, Mukai H, Kogi M, Kasuga N, Takeuchi K, Yamane K, Fukayama M, Mori S: "Secretion of interleukin-6 and vascular endothelial growthfactor by spindle cell sarcoma complicating with Castleman's disease, so-called Vascular Neoplasia"J Pathol.