研究課題/領域番号 |
12218213
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
那須 民江 信州大学, 医学部, 講師 (10020794)
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研究分担者 |
太田 節子 信州大学, 医学部, 助手 (90143974)
久保田 健夫 国立精神神経センター, 室長 (70293511)
福嶋 義光 信州大学, 医学部, 教授 (70273084)
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キーワード | 食道がん / p53 / 中国 / 分子疫学 / 食生活 / 井戸水 / 飲酒 / 喫煙 |
研究概要 |
食道の腫瘍組織には30〜40%の頻度でがん抑制遺伝子(p53)に変異が認められる。中国河北省の食道がん高発地域の食道がん患者77名と、低発地域の食道がん患者50名について、食道腫瘍組織のp53変異を分析し、そのスペクトルを知ると共に、喫煙・飲酒習慣や食生活等の環境要因との関連性を検討した。 《結果》1.高発地域の患者の年齢は低発地域の患者よりも若かった。高発地域の患者には食道がんの家族歴を有す者が多く、特に父に食道がんの既往歴を持つ者が多かった。2.高発地域:77名のうち、p53遺伝子変異が確認されたのは36名(46.8%)で、男女差は認められず、確認されない者との年齢差も認められなかった。変異はエクソン5と8に多く(72.2%)みられた。3.低発地域:50名の患者のうち、p53変異が認められたのは24名(48.0%)であり、p53変異の割合に地域差は認められなかった。変異は女性に多くみられる傾向であった。部位別変異をみると、この地域においてはエクソン7に最も多く(45.8%)、高発地域患者の7名(19.4%)と比べて高いことが判明した。4.対象者の食生活状況をp53遺伝子変異の有無で比較した。高発地域患者においては、p53変異のある者の職業の強度は軽かったが、それ以外の項目にp53変異有無の差は認められなかった。低発地域患者においては、p53変異のある者は「辛い食物の摂取」が多く、この習慣のある者のうち、80%はエクソン7と8の変異であった。また、p53変異は井戸水の使用者や、生水を飲む者に多く、生水を飲む者は全員が井戸水を使用していた。5.井戸水の使用は高発地域の患者に多かったが、生水の飲用、かびの生えた食物の摂取、干し芋の摂取、熱い物や辛い物の摂取習慣はむしろ低発地域の患者に多かった。 いずれの地域においても、飲酒および喫煙習慣とp53変異との関連性は認められなかった。
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