研究概要 |
既存のDNA症例対照DNAを用いた解析スプライス異常をおこす多型遺伝子多型の選択は、従来の発がん研究から予想されるような、癌原物質の代謝や、解毒、DNA障害の修復にかかわる遺伝子の多型に加え,data base上で、スプライス異常を起こしうる場所にある多型、転写制御遺伝子部位にある多型などを抽出し、その機能差を確認してから、症例対照DNAの評価を行った。<I>In silico/I>での多型の抽出は、NCBIの多型databaseで、splice siteというキーワードで抽出し、さらに腫瘍の生物学的性質となんらかの関連のありそうな遺伝子を順次とりあげ、その多型が実際に存在すること、産物のRNAレベルでの確認、その異常による不完全あるいは機能のないタンパクの産生、さらに異常による局在の異常などの生物学的性質の変化を明らかにした。そののちに、実際のヒト胃がんや大腸がんの症例対照DNAを用いて分子疫学的意義を評価した。その際、食事歴や喫煙歴などの環境要因との相互作用を見た。これまで、このような方法で、あがってきた候補遺伝子多型は10数個であり、本年度は、うち3種頬、KLK12,MYH, Neil1については異常タンパクの産生や、局在の異常、機能の異常を確認したKLK12はserine-protease familyの遺伝子でPSAもこの仲間である。Splice variant IVS4+2T>Cは比較的commonな多型であり(allelle Tが37%)、T/T:T/C:C/Cは16,42,42%であった。さらに50例の日本人胃がん症例のDNA について、exon2からexon7までをPCR-SSCPで解析するとそのほかにも3つの新たな多型が見出された。618_619delTGと735G>Aはともに、stop codonを途中で生じたり(Cys206fsX72)、アミノ酸が変わったり(Met245lle)するのでKLK12の機能になんらかの影響があるのではないかと考えられた。そのほか、infron3にIVS3-70_71insGGをみとめた。多型IVS+2T>Cは実際C/Cの個体ではSer200とAsp88という、Ser Proteaseの活性部位を欠いた変異RNAしか検出されなかった。さらにタンパクレベルでも野生型の発現のないことを確認した。KLK12の腫瘍患者や腫瘍における臨床的意義を検討する場合この多型を考慮する必要がある。
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