扁平上皮がんの悪性度の解明と臨床疫学

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12218224
• 研究機関: 山口大学
• 研究代表者: 加藤 紘 山口大学, 医学部, 教授 (10034969)
• 研究分担者: 塚本 直樹 国立病院九州がんセンター, 院長 ; 住浪 義則 小野田市立病院, 医長 ; 縄田 修吾 山口大学, 医学部, 助手 (60294625)
• キーワード: SCC抗原 / 扁平上皮癌 / セルピン / アポトーシス / NK細胞 / 蛋白分解酵素 / 腫瘍形成 / alternative splicing product

研究概要

セリンプロテアーゼインヒビター(セルピン)ファミリーに属する扁平上皮癌関連蛋白SCC抗原(SCCA)にはアミノ酸レベルで92%と相同性の非常に高い2種類(SCCA1、SCCA2)が存在する。今回確立した両者を特異的に測定するmRNAおよび蛋白測定法では、癌組織でSCCA1、SCCA2ともに増加していたが、特にSCCA2の発現が有意に亢進していた。また、熱安定性の差異を利用して新たに確立したSCCA1、SCCA2の分別法でも癌組織中のSCCA1/SCCA比は減少する傾向を認めた。SCCAの生物学的機能については、遺伝子導入実験により、両者とも種々の刺激で誘導されるアポトーシスを抑制する作用のみならず、細胞間接着能(カドヘリン活性)を高める働きを有し、扁平上皮癌の腫瘍形成促進に密接に関与している可能性が示唆された。また、癌で特に増加するSCCA2は、in vitroで蛋白分解酵素であるカテプシンGにより誘導されるNK細胞の化学遊走能を減弱したことから、腫瘍は細胞外にSCCA2を分泌しNK細胞の腫瘍への浸潤を抑制することでもアポトーシスから免れている可能性が考えられた。さらに、SCCA1、SCCA2には、alternative splicing productが各々存在することを見い出した。今後、これらSCCAの発現調節因子の解明をすすめると共に、新たに見い出したalternative splicing productの発現、意義についてもさらに研究を進める予定である。

研究成果

• [文献書誌] S.Nawata: "Electrophoretic characterization of heat stable squamous cell carcinoma antigen"Electrophoresis. 22. 3522-3526 (2001)
• [文献書誌] Y.Suminami: "Novel forms of squamous cell carcinoma antigen transcripts produced by alternative splicing"Biochim. Biophys. Acta. 1519. 122-126 (2001)
• [文献書誌] Y.Suminami: "Suppression of a squamous cell carcinoma (SCC)-related serpin, SCC antigen, inhibits tumor growth with increased intra tumor infiltration of natural killer cells"Cancer Res.. 61. 1776-1780 (2001)
• [文献書誌] A.Murakami, al.: "Squamous cell carcinoma antigen suppresses radiation-induced cell death"Br. J. Cancer. 84. 851-858 (2001)
• [文献書誌] S.Nawata: "Nondenaturing two-dimensional electrophoretic analysis of loop-sheet polymerization of serpin, squamous cell carcinoma antigen-2"Electrophoresis. 22. 161-164 (2001)
• [文献書誌] F.Numa: "Serum Anti-p53 Antibodies in uterine and ovarian cancer : Association with DNA Sequence Copy Number Abnormalities"Tumor Biol.. 21. 162-168 (2001)