扁平上皮がんの悪性度の解明と臨床疫学

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12218224
• 研究機関: 山口大学
• 研究代表者: 加藤 紘 山口大学, 学長 (10034969)
• 研究分担者: 坂口 優子 山口大学, 医学部附属病院, 助手 (60335750) ; 縄田 修吾 山口大学, 医学部, 助手 (60294625) ; 住浪 義則 小野田市立病院, 産婦人科, 医長 ; 塚本 直樹 国立病院, 九州がんセンター, 院長
• キーワード: SCC抗原 / 扁平上皮癌 / セルピン / アポトーシス / NK細胞 / 蛋白分解酵素 / 腫瘍形成 / 細胞浸潤能

研究概要

臨床上有用となる扁平上皮がんの進展に関わる新しい予後因子と、その理論的根拠を解明することを目的として、独自に同定したセリンプロテア-ゼインヒビタ-(セルピン)に属する扁平上皮癌関連蛋白SCC抗原(SCCA)に着目し、その発現状態と病態の悪性度(転移能、予後など)との関係、及び、SCCAの生物学的活性を検討した。SCCAには相同性の非常に高い2種類のSCCA1、SCCA2が存在したが、癌では特にSCCA2の発現が有意に亢進していた。臨床進行期Ib-II期の子宮頸部扁平上皮癌患者では、治療前血清中SCCA2値は予後不良因子となる可能性が示唆された。SCCAの生物学的活性については、両者とも、TNFα、抗癌剤、放射線で誘導されるアポトーシスを減弱させる作用の他に、細胞外での働きとしてNK細胞化学遊走性抑制作用を有することを報告した。正常と癌で発現量に有意な差を認めなかったSCCA1に関して、プロテアーゼと反応した結果生じるcleaved formは癌組織中に異常に存在することを見い出した。さらには、SCCA発現が細胞浸潤能に及ぼす影響を、マトリゲルインベージョンチャンバーを用い検討した結果、SCCA1、SCCA2遺伝子導入細胞ではコントロール細胞に比べ有意に浸潤能が増加することが判明し、扁平上皮癌の浸潤機構においても、SCCAは重要な役割を有していることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Yuyama, N., Suminami, Y., Kato, H., et al.: "Analysis of novel disease-related genes in bronchial asthma"Cytokine. 19. 287-296 (2002)
• [文献書誌] Umayahara, K., Nawata, S., Kato, H.et al.: "Genetic alterations related to lymph node metastasis and peritoneal dissemination in epithelial ovarian cancer"Oncol Rep.. 9. 1115-1119 (2002)
• [文献書誌] Umayahara, K., Suminami, Y., Kato, H.et al.: "Comparative genomic hybridization detects genetic alterations during early stages of cervical cancer progression"Genes Chromosomes Cancer. 33. 98-102 (2002)
• [文献書誌] Numa, F., Sakaguchi, Y., Kato, H.et al.: "Syndecan-1 expression in cancer of the uterine cervix: association with lymph node metastasi"Int J Oncol.. 20. 39-43 (2002)
• [文献書誌] Nawata, S., Suminami, Y., Kato, H.et al.: "Electrophoretic characterization of heat stable squamous cell carcinoma antigen"Electrophoresis. 22. 3522-3526 (2001)
• [文献書誌] Suminami, Y., Nawata, S., Kato, H.et al.: "Novel forms squamous cell carcinoma antigen transcripts produced by alternative splicing"Biochim. Biophys. Acta. 1519. 122-126 (2001)