環太平洋地域におけるがんの要因探索

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12218231
• 研究機関: 鹿児島大学
• 研究代表者: 秋葉 澄伯 鹿児島大学, 医学部, 教授 (50145554)
• 研究分担者: 帆北 修一 鹿児島大学, 医学部, 助手 (60274833) ; 黒野 祐一 鹿児島大学, 医学部, 教授 (80153427) ; 栄鶴 義人 鹿児島大学, 医学部, 教授 (00041351) ; 伊藤 哲彦 鹿児島予防医学研究所, 副部長 ; 郡山 千早 鹿児島大学, 医学部, 講師 (30274814)
• キーワード: 環太平洋 / 胃がん / EBウイルス / 病理 / 疫学 / サブタイプ / p53

研究概要

胃がんは環太平洋地域の主要ながんの一つであるが、本研究では胃がんの自然史におけるEBウイルス(EBV)の役割を明らかにするため、環太平洋地域の胃がん症例(国内2077例、国外1552例)を用いて病理学的、ウイルス学的、疫学的検討を行った。以下、主な結果を列挙する。
1)p53蛋白とc-metの発現パターンを検討したところ、EBV関連胃がんではp53蛋白の発現がsporadicであるのに対しEBV非関連胃がんではdiffuseである傾向があり、両者に違いを認めた。一方、c-metの発現パターンには著差を認めなかった。また、予備的検討でP53異常発現が見られるEBV関連胃がんの予後が他の胃がんに比べ良いことが示された。
2)組織型を検討したところ、EBV関連胃がんの出現頻度はintestinal typeとdiffuse typeで著差を認めなかったが年齢分布は両者で異なり、intestnal typeでは年齢とともにEBV関連胃がんの占める割合が減少するが、diffuse typeではむしろ増加していた(近位3分の一の胃がんを除く)。なお、胃以外の消化管ではEBV関連がんは認められなかった。
3)EBV関連胃がんは男性に多く幽門部に少ないが、性、がんの部位、組織型、ステージ等を勘案してもEBV関連胃がんは北米・南米(メキシコ、コロンビア、チリ)に多く(8-17%)、アジア各国(中国、日本等)では少なかった(5-10%)。さらに、胃がんから検出されたEBVをサブタイピングしたところ、日本ではsubtype A, BamHI-Iのtype Cが多いのに対し、中南米地域では、subtype BやBamHI-Iのtype Dが多く、胃がんから検出されるEBVサブタイプの分布に地域差があることが示唆された。
4)わが国でEBV関連胃がんと非関連胃がんの生活習慣等を調査したところ喫煙習慣や出生順位に違いがあることを示唆する結果が得られた。同様の調査をラテンアメリカ諸国で現在実施中である。

研究成果

• [文献書誌] Kijima Y, Hokita S, et al.: "Epstein-Barr virus involvement is mainly restricted to LB type of gastric carcinoma among various epithelial neoplasms"Journal of Medical Virology. 64. 513-518 (2001)
• [文献書誌] Seki D, Ueno K, Kurono Y, et al.: "Clinicopathological features of Epstein-Barr virus-associated nasal T/NK cell lymphomas in southern Japan"Auris Nasus Larynx. 28. 61-70 (2001)
• [文献書誌] Koriyama C, Akiba S, et al.: "Epstein-Barr virus-associated gastric carcinoma in Japanese Brazilians and non-Japanese Brazilians in Sao Paulo"Japanese Journal of Cancer Research. 92. 911-917 (2001)
• [文献書誌] Koriyama C, Shinkura R, et al.: "Human leukocyte antigens related to Epstein-Barr virus-associated gastric carcinoma in Japanese patients"European Journal of Cancer Prevention. 10. 69-75 (2001)
• [文献書誌] Corvalan A, Koriyama C, Akiba S, et al.: "Epstein-Barr virus in gastric carcinoma is associated with location in the cardia with diffuse histology. A study in Santiago, Chile"International Journal of Cancer. 94. 527-530 (2001)
• [文献書誌] Kijima Y, Hokita S, et al.: "Amplification and overexpression of c-met gene in Epstein-Barr virus-associated gastric carcinomas"Oncology. 62. 60-65 (2002)