研究概要 |
成人T細胞白血病(ATL)と子宮頚がんをウイルス関連発がんのモデルとして、それぞれの病因ウイルス(HTLV-1,HPV>に対する発がん感受性の宿主要因をHLA遺伝子多型と抗原認識機能との相関で解析した。ATL患者家系に好発するHLA-A^*26,B^*4002,B^*4006,B^*4801はHTLV-1 Taxペプチドに対するアンカーモチーフがなく、抗HTLV-1 Tax CD8+CTLをほとんど誘導しないことが明らかになった。ここに、ATL発症リスクがHLA遺伝子多型の免疫機能から明らかにされた。一方、南米アンデスのHPV陽性子宮がん患者ではHLA-DRB1^*1602の頻度が有意にたかく、HPV感染と子宮がん感受性の宿主要因としてHLA-DRB1^*1602の関与が示唆された。日本人の子宮がん患者ではHLA-DRB1^*0901が高率に検出されたが、HPV感染の有無との相関解析で統計学的有意性がみられず、日本人子宮がんのHPV感受性との関係は未決のまま残された。日本人集団のなかでHTLV-1低免疫応性のHLA遺伝子型をホモ接合体でもつ個体は5%以下であり、大多数は中〜高免疫応答のHLA遺伝子型とのヘテロ接合体であることからウイルスワクチンによる発がん予防の方策が考えられた。そこで、HTLV-1TaxとEnvペプチドを肝炎ウイルスのコア粒子(HBc)に組み込んだキメラ蛋白を作成し、、その免疫原性をHTLV-1キャリアのリンパ球とHLAトランスジェニックマウスによるCTL誘導能で確認中である。他方、緑茶ポリフェノールはHTLV-1感染細胞にアポトーシスをおこしHTLV-1プロウイルス量を減少させることを発見した。これによって、HTLV-1低免疫応性HLAをホモ接合体でもつATLハイリスクのHTLV-1キャリアに対しては緑茶飲用による化学予防が可能となった。
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