研究概要 |
成人T細胞白血病(ATL)と子宮頚癌をウイルス関連発癌のモデルとして、それぞれの病因ウイルス(HTLV-1とHPV)に対する免疫応答機能の遺伝的多型と生活環境の影響を検討した。HTLV-1キャリア(AC)ではHTLV-1感染T細胞(または白血病細胞)に対するCTLが誘導され、ATLの発症抑制に寄与すると考えられている。新規開発のHTLV-1 Tax/Env・HLAテラマーを用いてACの末梢血単核細胞(PMBC)のCTLを測定したところ、HLA-A^*0201ではHTLV-1 Tax11-19とTax178-186を認識するCTLが検出された。HLA-A^*2402ではTax12-20,Tax187-195,Tax289-297,Tax301-309,Tax311-319とEnv21-29,に対するCTLが検出された。これらのHTLV-1特異的CTLは寛解期のATL患者でも検出され、ACからATLにいたる免疫動態のモニタリングシステムが確立された。子宮頸癌患者ではHPV感染とHLA遺伝子多型との関連が認められ、HPV発がんと免疫応答との関係が示唆された。一方、緑茶ポリフェノールにはHTLV-1 Tax遺伝子の発現を抑制し血中プロウイルス量を減少させることが発見された。ここに、緑茶飲用によるATL予防介入が可能となった。南米ボリビアの子宮頚癌多発集団では緑黄野菜の多量摂取による子宮癌の発症リスクの低下が観察され、緑茶飲用などによる化学予防の可能性が示唆された。以上の知見により、ウイルス関連発がんを予防するワクチンの開発と化学予防の論拠がしめされた。
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