がん関連遺伝子発現の個体差と宿主・環境要因に関する研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12218239
• 研究種目: 特定領域研究(C)
• 研究機関: 埼玉県立がんセンター
• 研究代表者: 中地 敬 埼玉県立がんセンター, 研究所, 首席研究官 (00142117)
• 研究分担者: 赤木 究 埼玉県立がんセンター, 研究所, 研究員 (30244114) ; 林 慎一 埼玉県立がんセンター, 研究所, 主任研究員 (60144862) ; 三宅 智 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (00332346) ; 菅沼 雅美 埼玉県立がんセンター, 研究所, 主任研究員 (20196695) ; 大倉 康男 埼玉県立がんセンター, 臨床病理部, 医長 (30312284)
• キーワード: 発がんリスク / がん化学予防 / コホート研究 / NK活性 / エストロゲンレセプター / hnRNP / 緑茶

研究概要

本研究の目的は、発がんメカニズムの個体差の理解に基づいたがん予防を実現することである。まず、多段階発がんとがんの場という基本的な概念に基づいて、発がんの各段階に関与する遺伝子の発現・構造の変化が、個体の宿主要因及び環境要因によってどのように修飾されるか、その内因性のメディエーターを含めて"発がん個体差の起源"を明らかにする。また、発がんプロモーションに注目したがん予防法を確立するために、内因性の発がんプロモーターの役割及び発がんリスクとの関係を明らかにする。さらに、発がんハイリスクグループを対象としたがんの化学予防研究を基礎から臨床試験まで統合した形で推進する。(1)コホート研究で発がんとの関連を見出したNK活性の個体差について実験医学的検討を行い、granule及びFas ligand依存性NK活性に重要なレセプターを見出した。さらに、PHAによるリンパ球幼若化反応が、喫煙者の発がんリスクの指標となること及びDNA鎖切断と相関することを見出した。(2)臨床材料を用いて発がん関連遺伝子の発現を検討したところ、乳がんの発生・進展に重要なエストロゲンレセプターERαの機能がMDM2との相互作用により促進され、野生型p53により抑制されることを見出し、ERαの活性制御による乳がん予防の可能性を示した。また、肺がんで過剰発現するhnRNP B1が、微小肺がん、気管支異形成においても高頻度に過剰発現することを見出し、肺がん高危険群の同定及び予防の代理指標として有用である可能性を示した。3.胃がんの発生に重要な役割を持つH.pyloriの主要な膜タンパク質の一つが発がんプロモーション活性を持つことを見出した。また、緑茶ポリフェノールによる遺伝子発現の変化をcDNAアレイによって検討し、緑茶によるがん予防効果を表わす代理指標となる候補遺伝子を見出した。

研究成果

• [文献書誌] Suga,K.,Nakachi,K.,Hayashi,S-I., et al.: "Molecular significance of excess body weight in postmenopausal breast cancer ptatients, in relation to expression of insulin-like growth factor I receptor and insulin-like growth factor II gene"Jpn.J.Cancer Res.. 92. 127-134 (2001)
• [文献書誌] Nakachi,K.,Miyake,S.,Suganuma,M., et al: "Preventive effects of drinking green tea on cancer and cardiovascular disease : Epidemiological evidence for multiple targeting prevention"BioFactors. 13. 49-54 (2001)
• [文献書誌] Yoshida,T.,Nakachi,K.,Hayashi,S-I., et al: "Distinct mechanisms of loss of estrogen receptor α gene expression in human breast cancer : methylation of the gene and alteration of trans-acting factors"Carcinogenesis. 21. 2193-2201 (2000)
• [文献書誌] Imai,K.,Nakachi,K.,Miyake,S., et al: "Natural cytotoxic activity of peripheral-blood lymphocytes and cancer incidence : an 11-year follow-up study of a general population"Lancet. 356. 1795-1799 (2000)
• [文献書誌] Matsuyama,S.,Nakachi,K.,Sueoka,E., et al: "Heterogeneous nuclear ribonucleoprotein B1 expressed in esophageal squamous cell carcinoma as a new biomarker for diagnosis"Jpn.J.Cancer Res.. 91. 658-663 (2000)
• [文献書誌] Eguchi,H.,Nakachi,K.,Hayashi,S-I et al: "Different expression patterns of Bcl-2 family genes in breast cancer by estrogen receptor status with special reference to pro-apoptotic Bak gene"Cell Death & Differ. 7. 439-446 (2000)
• [文献書誌] Fujiki,H.,Nakachi K.,Suganuma,M.,Sueoka,E., et al: "Dietary Anticarcinogenes and Antimutangens-Chemical and Biological Aspects"Royal society of chemistry, London. (2000)