ブラジル日系移民を対象としたがんの疫学研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12218241
• 研究機関: 国立がんセンター研究所
• 研究代表者: 津金 昌一郎 国立がんセンター研究所, 支所・臨床疫学研究部, 部長 (40179982)
• 研究分担者: 花岡 知之 国立がんセンター研究所, 支所・臨床疫学研究部, 室長 (00228503)
• キーワード: ブラジル日系移民 / がん / 胃がん / 乳がん / 症例対照研究 / 断面研究 / 環境要因 / 遺伝的素因

研究概要

ブラジルを中心とする在外で生活する日系人を対象として、がん発生における遺伝的素因と環境要因との関わりについて疫学的手法を用いて検討している。サンパウロ州における1999年から2001年の3年間の死因統計に基づき、がんの年齢調整死亡率(SMR)求め、日本人またはサンパウロ州在住ブラジル人の統計と比較した。日系人のがん死亡は、胃がん・大腸がん死亡は日本人と変わらず、肝がん・胆のうがん・肺がん死亡が少なく、前立腺がん・乳がん・子宮がん・脳腫瘍死亡が多いという特徴が観察された。また、日系人とブラジル人に加えて、日本在住者を対象に実施した胃がんの症例対照セットに対してhOGG1のSer326Cys遺伝子多型解析を行った。その結果、すでに解析が終わっている日系人とブラジル人のセットと比べると、遺伝子多型頻度は、日本人、日系人、ブラジル人の順で変異型を持つ割合が高く、人種間に違いが見られたが、症例対照間ではいずれの人種でも差がなかった。Helicobacter pylori感染、萎縮性胃炎、喫煙とhOGG1多型との相互作用を検討したところ、ブラジル在住者では有意な違いが見られなかったが、日本人では萎縮性胃炎の胃がんに対するリスクがhOGG1多型により有意に異なることが明らかになった。乳がんの症例対照研究を関連施設の倫理審査承認後に開始し、これまでに日系人症例63例、ブラジル人症例421例、日本人症例305例、および、ほぼ同数の対照例の調査を終了した。また食物摂取頻度調査の妥当性研究を開始し、55人の日系人とブラジル人の対象者に対して食物摂取頻度調査1回と4日間の食事記録調査を2回(冬と夏)行った。

研究成果

• [文献書誌] Tatemichi, M., et al.: "Ethnic difference in serology of Helicobacter pylori CagA between Japanese and-non Japanese Brazilians far non-cardia gastric cancer."Cancer Science. 94. 64-69 (2003)
• [文献書誌] Hara, M., et al.: "Cruciferous Vegetables, Mushrooms, and Gastrointestinal Cancer Risks in a Multi-center, Hospital-based Case Control Study in Japan."Nutr Cancer. 46. 138-147 (2003)
• [文献書誌] Yoshimura, K., et al.: "Allele frequencies of single nucleotide polymorphisms (SNPs) in 40 candidate genes for gene-environment studies on cancer : data from population-based Japanese random samples"J Human Genet. 48. 654-658 (2003)
• [文献書誌] Machida-Montani, A., et al.: "Association of Helicobacter pylori infection and environmental factors in non-cardia gastric cancer in Japan."Gastric Cancer. (in press). (2003)