核内レセプター転写制御の分子メカニズムの解明

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12219206
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 加藤 茂明 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (60204468)
• 研究分担者: 武山 健一 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助手 (30323570)
• キーワード: ホルモン依存性癌 / ホルモン非依存性癌 / 転写共役因子群 / ERα、ERβ / アンドロゲンレセプター(AR) / 性ステロイドホルモン応答性 / SRC-1、TIF2 / TRRAP、GCN5

研究概要

ホルモン依存性癌においては核内レセプター自身の変異や欠失などの質的、量的な変異がすでに報告されているが、現在までに核内レセプターの変異がホルモン非依存性癌に直ちに結びつく例は証明されていない。一方、ホルモン依存性癌と転写共役因子及びその複合体の異常との関わりは不明であるが、依存性、非依存性癌の発症に深く関与する可能性は高い。本研究では転写共役因子群の性状、変異を解析し、性ホルモン非依存性生殖器癌発症の分子メカニズムを探ることを目的として、以下の2点に焦点を当て研究を進めた。
1.ホルモン依存性癌に関与するレセプター共役因子の同定
ホルモン依存性癌において中心的な役割を果たす性ステロイドホルモンのレセプター転写共役因子複合体は、C末端の転写促進領域に結合するものが判明しているが、N末端へ結合する複合体は不明である。そこで性ステロイドレセプター種[ERα、ERβ、アンドロゲンレセプター(AR)]固有かつN末端に結合する転写共役因子複合体の検索・同定を、ホルモン依存癌由来の各種細胞株の核抽出液を用いたin vitro転写系により試みた。この時、第一には転写を促進する因子群の同定を目指すが、同時にクロマチン構造を制御する因子や、細胞周期を制御する因子などの同定も試みた。
2.ホルモン依存性癌におけるステロイドレセプター転写共因子の機能
転写共役因子の機能異常もしくは量的な制御により、ホルモン依存性癌における性ステロイドホルモン応答性が変わる可能性が示唆されている。この点を明確にする目的で、転写共役因子のノックアウトマウス作出を試みた。申請者らは既に、性ステロイドホルモンレセプター転写共役因子SRC-1、TIF2遺伝子のconditionalノックアウトマウスを作成している。同時にTRRAP及びGCN5をノックアウトすることで、TRRAP/GCN5転写複合体の機能を、化学発癌等の動物実験により、ホルモン依存性癌での機能が明らかになりつつある。

研究成果

• [文献書誌] Sato, T., Matsumoto, T., Kawano, H., Kato, S., et al.: "Brain masculinization requires androgen receptor function"Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 101. 1673-1678 (2004)
• [文献書誌] Murayama, A., Kim, M., Yanagisawa, J., Kato, S., et al.: "Ligand-induced transrepression by a nuclear receptor mediated by a bHLH-type activator through co-regulator switching"EMBO J.. In press. (2004)
• [文献書誌] Kitagawa, H., Fujiki, R., Yoshimura, K., Kato, S., et al.: "The chromatin remodeling complex WINAC targets a nuclear receptor to promoters and is impaired in Williams Syndrome"Cell. 113. 905-917 (2003)
• [文献書誌] Ohtake, F., Takeyama, K., Matsumoto, T., Kato, S., et al.: "Modulation of estrogen receptor signalin by association with the activated dioxin receptor"Nature. 423. 545-550 (2003)
• [文献書誌] Suzawa, M., Takada, I., Yanagisawa, J., Kato, S., et al.: "Cytokines suppress adipogenesis and PPAR-gamma function through the TAK1/TAB1/NIK cascade"Nature Cell Biol.. 5. 224-230 (2003)
• [文献書誌] Kawano, H., Sato, T., Yamada, T., Kato, S., et al.: "Suppressive function of androgen receptor in bone resorption"Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 100. 9416-9421 (2003)