酵母の系を利用して分離されたTAK1はMAPKKKファミリーに属し、動物細胞においてWntやTGF-β等のシグナル伝達経路で機能することを明らかにしてきた。TAK1はNLKMAPキナーゼと新規のカスケードを構成し、Wnt/β-cateninシグナル伝達経路を負に制御している。しかし、TAK1ムNLKMAPキナーゼカスケードが、どのうようなシグナルで制御されているかは明らかでなかった。本研究では、TAK1-NLK経路がWnt-5a/Ca2+シグナル伝達系の下流でCa2+/calmodulin-dependent protein kinaseIIを介して活性化されることを明らかにした。TGF-βシグナルは、細胞の増殖を制御する最も重要なシグナルのひとつである。その異常は細胞のガン化を引き起こすことが知られている。TGF-βの細胞内シグナル伝達には、Smadと呼ばれる一群のタンパク質がTGF-βに応答する遺伝子の発現を誘導し、最終的に細胞増殖を阻害することが明らかになっている。一方、最近ガン遺伝子産物であるSki/Sn oNが、TGF-β応答遺伝子の発現を抑制してTGF-βシグナルを負に制御する働きをしていることが示された。細胞がTGF-β刺激を受けるとSki/Sn oNは速やかに分解され、その負の制御が解除される。本研究で、TAK1が関わる新たな機構としてTGF-βによるSn oNの分解に働くことを明らかにした。このTAK1のSn oN分解誘導経路は、SmadによるSn oNの分解誘導経路とは異る機構を介しており独立して存在する。TGF-βによるSn oN分解は、この2つの経路を含む複数の経路によって引き起こされていると考えられる。
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