細胞増殖・分化および細胞周期を制御するシグナル伝達の分子機構

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12219208
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 西田 栄介 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (60143369)
• キーワード: MAPキナーゼ / ドッキング相互作用 / Tob / シグナル伝達インヒビター / Sprouty / 細胞周期 / Plk1

研究概要

MAPキナーゼ分子とその生理的基質との間にはドッキング相互作用が重要な役割を果たしているという知見に基づき、古典的MAPキナーゼERKの細胞内基質を検索した結果、細胞増殖抑制タンパク質Tobを新たな基質として同定した。細胞増殖刺激により活性化したERKがTobのセリン残基をリン酸化することにより、その細胞増殖抑制作用を解除し、細胞が静止期からS期へと進行する、というシナリオを提唱した。受容体チロシンキナーゼのシグナル伝達経路のインヒビターとして同定されていたSproutyについて、その作用機構を解析し、Sprouty1とSprouty2がRas/ERK経路の新しいタイプのネガティブフィードバックインヒビターであることを示した。すなわち、増殖因子刺激依存的なチロシンリン酸化によりSproutyのインヒビター活性が可逆的に調節されうることにより、SproutyがERK MAPキナーゼの活性化の程度と活性化時間を精妙に制御し、細胞の増殖・分化を調節していることを明らかにした。Plk1の細胞内局在の分子基盤を解析し、Plk1がbipartite nuclear localization signal(NLS)を有すること、またそのNLSによりS期からM期におけるPlk1の核局在が制御されていることを明らかにした。さらに、Plk1の核内局在が細胞周期におけるG2期からM期への進行にとって重要であることを示した。

研究成果

• [文献書誌] Ookuma, S. et al.: "Identification of a DAF-16 transcriptional target gene scl-1 that regulates longevity and stress resistance in Caenorhabdit is elegans"Current Biology. (in press). (2003)
• [文献書誌] Terasawa, K. et al.: "Regulation of c-Fos and Fra-1 by the MEK5-ERK5 pathway"Genes to Cells. (in press). (2003)
• [文献書誌] Kawachi, K. et al.: "Essential role of the transcription factor Ets-2 in Xenopus early development"Journal of Biological Chemistry. 278. 5473-5477 (2003)
• [文献書誌] Taniguchi, E. et al.: "Nuclear translocation of Plk1 mediated by its bipartite nuclear localization signal"Journal of Biological Chemistry. 277. 48884-48888 (2002)
• [文献書誌] Hanafusa, H. et al.: "Sprouty1 and Sprouty2 provide a control mechanism for the Ras/MAPK signalling pathway"Nature Cell Biology. 4. 850-858 (2002)
• [文献書誌] Maekawa, M. et al.: "Identification of the anti-proliferative protein Tob as a MAP kinase substrate"Journal of Biological Chemistry. 277. 37783-37787 (2002)