研究概要 |
ガン自体を知り、差別化し、撲滅するというのが従来のガン研究の本流であったが、本研究では、「ガンを支える周囲組織の機能を明らかにすることで、周囲組織調節を通したガンの治療への展望を開く」事を目指している。 本年も、1)ガンの細胞治療への利用目的で、血管や血液細胞を試験管内で作成する方法、及び2)リンパ組織の発生プロセスの解明、特にこのプロセスに関わる血液と間質細胞の相互作用を解明を通して末梢リンパ組織を任意の場所に作成するための技術開発、の二つに焦点をあてて研究を行った。血管については、昨年のVEGFR2,VEGFR3の機能に加えて,本年はAngiopoietin 1の機能について特に焦点を当てて研究し,このシグナルのみで血管内皮の運動を調節し,高次な構造形成を促すことを明らかにした。一方、血液の発生については、SCL遺伝子を自由に誘導する実験システムを完成させ、血液のコミットメントの重要なプロセスが中胚葉段階で終わることを明らかにした。 末梢リンパ組織の形成については、これまでパイエル板形成を誘導する細胞として同定してきた細胞が,リンパ節を誘導する細胞であるかどうかの検討を行い、パイエル板もリンパ節も初期の発生過程では同じ細胞によりトリガーされていることを明らかにした。また、これまで不明なまま研究が進んでいなかった、リンパ節形成の初期過程の全貌を、IL-7受容体陽性細胞の動態を中心に明らかにした。この結果に基づき、リンパ節を形成に必須のシグナルであるRANKの下流分子TRAF6の欠損マウスの胎児期にIL-7を注射することでリンパ節形成の欠損を回復させることに成功した。
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