研究課題/領域番号 |
12219211
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宮坂 昌之 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50064613)
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研究分担者 |
平田 多佳子 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (00346199)
村井 稔幸 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (20311756)
田中 稔之 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (30217054)
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キーワード | CD44 / グリコサミノグリカン / 細胞接着 / 血管内皮細胞 / 癌転移 / セレクチン / リポソーム |
研究概要 |
われわれはこれまでに、癌細胞転移関連分子CD44がヒアルロン酸(GlcA-GlcNAc)だけでなく、コンドロイチン硫酸の構成成分であるGlcA/IdoA-GalNAcも認識することを明らかにし、CD44が血管内皮細胞のみならず、組織の間充織に存在する特定のプロテオグリカンと相互作用ができることを明らかにしてきた。一方、これまでに、腫瘍組織ではヒアルロン酸が分解されて低分子量ヒアルロン酸(LMW-HA)が生成することが報告されている。今回、このLMW-HAの生物学的意義を検討する一環として、癌細胞に対する活性を検討したところ、LMW-HAは癌細胞上のCD44に結合してCD44の細胞外領域の切断(CD44 cleavage)を誘導するとともに、癌細胞の運動性を著しく亢進させることが明らかになった。この現象は高分子量ヒアルロン酸では誘導できず、一定サイズ以下の低分子量のものだけで観察された。CD44 cleavageはメタロプロテアーゼ阻害剤によって阻害されることから、LMW-HAがCD44に結合することにより、癌細胞上に存在するメタロプロテアーゼが活性化され、これがCD44 cleavageを誘導することが示唆される。これに加えて、予備的ではあるが、低分子量化コンドロイチン硫酸にもCD44 cleavageの活性があることを確認している。また、LMW-HAが癌細胞においてヒアルロニダーゼ産生を誘導するという知見が得られている。これらのことから、癌組織で誘導、生成されるLMW-HAなどのグリコサミノグリカンが自己の産生するヒアルロン酸などの細胞外基質を分解し、さらにその分解産物が癌細胞に働いて癌細胞自身のメタロプロテアーゼ活性を亢進させ、これが癌の浸潤、転移の促進に関与する、という一種のオートクライン機構の存在が示唆される。
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