研究課題/領域番号 |
12219214
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
菊池 章 広島大学, 医学部, 教授 (10204827)
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研究分担者 |
安東 知子 広島大学, 医学部, 助手 (20294548)
岸田 昭世 広島大学, 医学部, 講師 (50274064)
小山 眞也 広島大学, 医学部, 助教授 (00186834)
岸田 想子 広島大学, 医学部, 教務員 (40274089)
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キーワード | Wntシグナル伝達経路 / カゼインキナーゼI / 蛋白質リン酸化酵素PP2A / Axam / SUMO化 / ストレス応答 / GSK-3 |
研究概要 |
癌抑制遺伝子産物APCとAxinは複合体を形成して、本複合体中においてβ-カテニンの安定性が制御される。これまでに、私共はAxinに種々の蛋白質が結合することを見出してきたが、本年度はAxinに蛋白質脱リン酸化酵素PP2AのBサブユニツト(PR61)が結合することを明らかにした。PR61はβ-カテニン依存性のTcf-4活性化を促進した。カゼインキナーゼI(CKI)はDvlに結合して、両蛋白質が相乗的にβ-カテニンを安定化して、Tcf-4を活性化した。したがって、Wntのシグナル伝達には、リン酸化と脱リン酸化が種々のレベルで関与すると考えられた。新規Axin結合蛋白質Axamはβ-カテニン分解促進活性と脱SUMO化活性を有し、Axamによるβ-カテニン分解には脱SUMO化活性が必要であった。これらの結果は、Wntのシグナル伝達にはβ-カテニンのGSK-3によるリン酸化とユビキチン化以外にSUMO化という翻訳後修飾も重要であることが明らかになった。 Wntシグナル伝達経路の中ではGSK-3のみが酵母にも保存されている。GSK-3の新たな活性制御機構および作用機構を明らかにするために、出芽酵母GSK-3遺伝子破壊株(Δgsk株)を作製した。このΔgsk株はガラクトース培地では成長が抑制された。Δgsk株の性質を多コピーで抑圧する遺伝子として、MSN2とPGM1を単離した。このうち、Msn2は種々のストレスに応答して核に移行し、STRE配列を認識して遺伝子発現を促進する転写因子である。Msn2の細胞内局在に関しては、野生型株とΔgsk株とでは変化は認められなかったが、Msn2のSTRE依存性の転写活性化能がΔgsk株で低下した。また、ガラクトース代謝に関係してSTRE配列を有するホスホグルコムターゼ(PGM)のmRNA量もΔgsk株では減少していた。Msn2とSTREの結合はGSK-3により増強された。これらの結果は酵母GSK-3がストレス応答に関与することを初めて示したものであり、Δgsk株が哺乳動物細胞GSK-3の機能解析にも有効であると考えられた。
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