研究課題/領域番号 |
12219214
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
菊池 章 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (10204827)
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研究分担者 |
岸田 昭世 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (50274064)
山本 英樹 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (20372691)
日野 真一郎 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (00372699)
岸田 想子 広島大学, 医学部, 教務員 (40274089)
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キーワード | Wnt / β-カテニン / ユビキチン化 / SUMO化 / Tcf-4 / PIASy / PKA |
研究概要 |
Wntシグナル伝達経路の異常においては、β-カテニンが安定化してTcfが活性化されることが知られている。これまでに、私共はAxinに種々の蛋白質が結合することにより、β-カテニンのリン酸化とユビキチン化が促進されβ-カテニンが分解することおよびTcfの活性にSUMO化が重要な役割を果すことを明らかにしてきた。今年度はβ-カテニンを介するシグナル伝達について次の点を明らかにした。 (1)PKAによるβ-カテニンの安定化の分子機構------Aキナーゼ(PKA)はプレセニリンと結合することにより、β-カテニンを分解することが報告されているが、PKAを活性化するとβ-カテニンは安定化した。さらに、PKAの活性化によりβ-カテニン依存性のTcf-4の転写活性化能が亢進した。Ser675をAlaに置換したβ-カテニンS675Aでは、PKA依存性の安定化とTcf-4の活性化が認められなかった。すなわち、PKAはβ-カテニンのSer675をリン酸化することにより、β-カテニンのユビキチン化を抑制し、β-カテニンを安定化すると考えられた。したがって、PKAの活性化はβ-カテニンを安定化させることにより、Wntシグナル伝達経路を活性化することが明らかになった。 (2)PIASyのSUMO化によるTcf-4の転写活性制御------私共はこれまでにTcf-4がSUMO化の基質であり、SUMO化のE3リガーゼであるPIASyがTcf-4のSUMO化を促進して、その転写活性を促進することを明らかにした。本年度はPIASy自身のSUMO化の生理的意義の解析を行った。まず、PIASyのSUMO化されるアミノ酸は35番目のリジン残基であることを同定した。SUMO化の起こらないPIASyの変異体(PIASyK35R)はTcf-4のSUMO化を促進せず、転写活性も亢進できなかった。野生型PIASyとPIASyK35RはそれぞれTcf-4と複合体を形成したが、その複合体の核内での局在は異なっていた。したがって、PIASyとTcf-4のSUMO化による翻訳後修飾はWntのシグナルの転写制御において重要であることが示唆された。
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