RB経路とp53経路の相関性の解析

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12219218
• 研究機関: 国立がんセンター研究所
• 研究代表者: 田矢 洋一 国立がんセンター研究所, 放射線研究部, 部長 (60133641)
• キーワード: p53 / 小胞体ストレス / p73 / GSK-3β / サイクリン / アポトーシス

研究概要

1.小胞体ストレスがp53依存性アポトーシスを阻害することを明らかにした。この阻害はグリコーゲン合成酵素3β(GSK-3β)でSer315とSer376がリン酸化されるとp53の細胞質における局在が増加することに,よって起きる。小胞体ストレスは核内におけるp53へのGSK-3βの結合を誘導し、p53の細胞質における局在を増強する。小胞体ストレスによって引き起こされたアポトーシス阻害はGSK-3βを必要とし、Ser315かSer376をAlaに置換した変異p53を発現する細胞では起きない。細胞質局在の増加の結果、小胞体ストレスはDNAダメージ後のp53の安定化とp53依存性アポトーシスを阻害する。p53の不活性化は小胞体ストレスに適応するために細胞が用いる防御機構であると結論された。
2.p73はp53ファミリーであり、発生プロセスとDNAダメ-ジ応答に関与する。p73の発現は細胞周期で制御されていることが示されており、これはp73が細胞増殖に役割を演じ、サイクリン依存性キナーゼのターゲッ卜かも知れないということを示唆する。この仮説に合致して、p73がさまざまなサイクリン(A、B、DとE)と物理的に相互作用することを見いだした。さらに、Cyclin A-Cdk1/2、CyclinB-Cdk1/2やCyclinE-Cdk2がin vitroでp73の多くのアイソフォームのThr86をリン酸化することを見いだした。リン酸化されたThr86を特異的に認識する抗体を作製して解析すると、この部位はin vivoでも細胞周期依存的にリン酸化されることがわかった。このリン酸化はS期に誘導され、G2/M期に最大ξなる。そして、このリン酸化はp21の発現を誘導するp73の能力を抑制することも見いだした。

研究成果

• [文献書誌] Gaiddon, C. et al.: "Cyclin-dependent kinases phosphorylate p73 at threonine 86 in a cell cycle dependent manner and negatively regulate p73."J.Blol.Chem.. 278. 20480-20489 (2003)
• [文献書誌] Qu, L.et al.: "Endoplasmic reticulum stress impairs the nuclear import of p53 and prevents p53-mediated apoptosis through the activation of the glycogen synthetase kinase 3β."Genes Dev.. 18. 261-277 (2004)
• [文献書誌] Oguchi, K.et al.: "Missense mutation and defective function of ATM in childhood acute leukemia patient with MLL gene arrangement."Blood. 101. 3622-3627 (2003)
• [文献書誌] Huang, S. et al.: "Protein kinase inhibitor 2-aminopurine overrides multiple genotoxic induced cellular pathways to promote cell survival."Oncogene. 22. 3721-3733 (2003)
• [文献書誌] Shinozaki, T. et al.: "Functional role of Mdm2 phosphorylation by ATR in p53 activation."Oncogene. 22. 8870-8880 (2003)
• [文献書誌] Takagi, M. et al.: "Identification and characterization of poly, orphic variations of the ataxia telangiectasia mutated (ATM) gene in childhood Hodgikin disease."Blood. 103. 283-290 (2004)
• [文献書誌] Taya Y et al.: "Tumor Suppressor Genes (ed. Wafik El-Deiry)のうち、"Generation and application of phospho-specific antibodies for p53 and pRB"を執筆"Humana Press Inc, USA. 657 (2003)