研究概要 |
1.種々の細胞の不死化と不死化機構の解析 これまで不死化機構の解析に用いてきたヒト正常乳腺上皮細胞に加え種々のヒト初代正常細胞の不死化あるいは長期延命に成功している。これまでに約20種類の正常細胞と1種類の腫瘍細胞の不死化を試み、そのうち2種類の細胞を除いて長期延命(多くは実質上不死化している)に成功している。これらの不死化細胞はこれまで対応する細胞株がなく困難であった種々の実験に利用されている。正常細胞の継代に伴うp16^<INK4a>,p21^<WAF1>などのCDKインヒビターの増加と各細胞種において不死化に必要だった導入遺伝子群との関係を検討している。多くの細胞ではp16^<INK4a>の増加はテロメアの短小化とは独立に起こることが明らかとなった。また継代に伴うp16^<INK4a>の増加は細胞によってはp21^<WAF1>の増加を伴い上皮細胞、内皮細胞、中皮細胞、リンパ球で共通にみられた。また、線維芽細胞においても皮膚由来の線維芽細胞を除いてp16^<INK4a>の増加が観察された。 2.E6の標的蛋白の同定とテロメラーゼ活性化および細胞トランスフォーメーション機構の解析 E6によるトランスフォーメーションにはE6のC末にあるPDZドメイン結合モチーフおよびE6APとの結合能の両者が必要である。HPV16とHPV33のE6のC末端アミノ酸はLeuであるが、HPV18などその他の子宮頸がんに関連するHPVではValである。PDZドメインでE6と結合する標的蛋白質はhDLG,hScrib,MUPP1,MUGI1が報告されているが2つの群のE6の間でその結合並びに分解促進能が異なることが明らかとなった。さらに新たにPSD95が良い標的であることを見つけた。E6のトランスフォーメーション活性と標的とする蛋白質の特異性から、真の標的の同定とトランスフォーメーション機構の解析をすすめている。
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