研究課題
平成14年度に成果をまとめるために、個々の研究者の具体的な研究テーマを限定し、インテンシブな資料調査や研究作業をおこなった。それとともに、研究会などを通じて、共有できる理論的枠組みや分析視角などについて、各自の研究の背景となる知識の拡大を図った。研究会では、近代的な宗教理解と、各地の具体的な宗教事情や宗教思想との関連を探る各自の研究を発表した。具体的には以下の通りである。池上は、死者(先祖)の祟り・霊障などに対する仏教的「供養」「調伏」といった対処法の淵源と歴史的展開を、[祟り-祀り]システムと[供養]システムの関係に焦点を合わせ、平安末期から鎌倉期にかけての仏教説話を題材として解明した。市川は、啓蒙主義と反啓蒙主義を軸とする西洋近代の宗教理解の生成過程を、19世紀にユダヤ学が成立する過程を通して解明した。具体的には、レオポルト・ツンツ、ウィルヘルム・フンボルト、フリードリッヒ・フォン・シラーを取り上げた。渡邊は、「自己は内なる神である」としたユングにおいて、「自己」概念が(1)初期の心霊研究や霊媒研究の段階、(2)コンプレックス論の段階、(3)元型論の段階、(4)共時性の段階、という四つの段階に分けられるものであることを示した。塩尻は、スーダンのイスラム法学者、ハサン・トラービーの政治的経歴と思想を取り上げ、いわゆる「原理主義」は、欧米などの外部からばかりではなく、当事者達によっても、西洋的な「近代」と土着の「伝統」との狭間で相対的・多面的に位置づけられていることを具体的に示した。
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