研究概要 |
本年度は4カ年継続の最終年次であり、次の3点の主要な目標があった。すなわち、(1)3カ年の不備を補いつつデータの整理をする。(2)事例研究を踏まえつつ調査票を用いた大量サンプル調査によるデータ収集を図る。(3)所期の目的に即した報告書を作成する。 (1)主要な考察対象となった北海道・秋田県・長野県・広島県における各自治体の人口・世帯・産業構造・所得・財政の5大項目に関する1980年度より5時点毎の数値データの整理は終了した。この結果を地図情報として再整理し、報告書に掲載すべく鋭意整備中である。すでに報告書の3分の1を占めるデータが得られている。申請テーマに接近するためにこの作業はもっとも基礎的である。他方、各地区・各個別対象についての事例的考察は、すでに報告書の作成に取りかかっている。 (2)事例研究に加えて調査票による大量サンプルのデータは、秋田県阿仁町に関して、調査結果を集約し終えて報告書の作成に向けて鋭意作業を進めている。なお長野県八千穂村住民、広島県芸北町雄鹿原地区住民、広島市住民(同郷人会会員)、そして首都圏住民(NPO『パオッコ』の会員)に関する大量サンプルは、秋田県阿仁町と異なる調査項目に基づく調査を実施中である。順次、集約し、報告書に加えるべく作業を進めている。 (3)申請テーマに関する理論化のためにV.L.Bengtson & W.A.Achenbaum,(1993), The Changing Contract Across Generations,; A.Hashimoto,(1996), The Gift Generationsを手掛かりにすると共にフランスにおける高齢者と既婚子との関係に関する聞き取り調査結果を参考にしたい。とくに後者では、高齢者と既婚子それぞれが高度に自立化を求められ、同居や遠距離介護といった現象は少数である。農家における親世代と次世代間に契約の文書化が浸透し始めている。いずれも文化的比較考察の意味で有益であるし興味深い。
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