研究概要 |
1.追跡調査の実施 本研究では、中高年期における引退過程と健康、家族との関係を縦断的な調査に基づいて解明することを目的としている。初回調査は、平成11年10月に全国55〜64歳の男性6,000人、女性2,000人に対して訪問面接法によって実施し、男性では2,533(回収率63.3%)、女性では1,440(回収率72.0%)から回答をえた。今年度は縦断調査のデータベースを作成するため、初回調査の完了者に対して訪問面接法によって追跡調査を実施した。実施時期は平成13年10月であった。さらに回収率を高めるために、「不在」「多忙」「病気」などの理由で調査不能であった人に対して、あらためて平成13年12月に追跡調査を実施した。最終的な回収数は、男性2,073(回収率81.8%)、女性1,213(回収率84.2%)であった。 2.データの質のチェック 追跡調査によって、初回調査だけでは確認できない基本属性を含めたデータのミスチェックが可能となる。初回調査のデータと追跡調査のデータとをマージし、データの質の確認を行った。 3.解析結果 1)仕事の特質(「仕事の要求量」「自由裁量」「技術や能力の活用」)のうち、中高年就労者の心身の健康維持に重要であるのは[技術や能力の活用」であることが明らかとなった。2)就労を中止する予測要因としては、健康状態が悪い、非自営業という従来から指摘されてきた要因以外に、仕事上の特性として「自分の技術や能力を生かせていない」ことが重要であることが明らかとなった。3)定年による職業からの引退は、精神的な健康や自尊感情に対してマイナスの影響はなく、ストレスフルライフイベントとして位置づけられるようなイベントではない可能性が示唆された。
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